【池田充雄】筑波学院大学(つくば市吾妻)経営情報学部の古家晴美教授が、学生向けに開いている調理実習「たむら塾」が10周年を迎えた。日本料理界の重鎮で料亭「つきぢ田村」3代目の田村隆さんが講師を務め、年1回、茨城の特産品を1品選んでさまざまな料理に仕上げている。10周年を記念した特設サイトもこのほど開設され、過去に取り上げた食材やレシピを今後続々と紹介していくそうだ。

古家教授の主要な研究テーマは現代日本の食生活と食文化。一例として、今年9月に世界湖沼会議の関連でかすみがうら市で開かれた「帆引き船シンポジウム」では、「霞ケ浦の恵みと魚食文化」と題して基調講演を行っている。

学生の食への関心の低さきっかけ

同教授が調理実習に取り組む契機となったのは、学生の食への関心の低さだったという。「食にお金や時間をかけなくなり、コンビニや外食に頼りがちになっている。料理することの楽しさを知り、自分の健康に直接かかわる食の重要性に気付いてほしい」。もう一つの狙いが、茨城特産の食材を紹介すること。「レンコン、ハクサイ、ピーマンなど、全国有数の生産量を誇るものがたくさんある。これらへの理解を深め、地域の魅力を掘り起こして伝えられる人材の育成も目指している」と古家教授はいう。

名店料理長が日本一の鶏卵で新メニュー

今年度の第10回たむら塾は11月7日、つくば市吾妻の吾妻交流センター調理室で開かれ、古家ゼミなどの学生18人が参加。茨城が生産量日本一の鶏卵をテーマ食材に選び、講師の田村さんが6種類のメニューを考案した。

田村さんは「料亭料理ではなく家庭などで手早く作れ、自炊のヒントになりつつバランス良く栄養が取れるものを考えた。肉料理や洋風料理など若い人が好むメニューも積極的に取り入れている」。料理が楽しくなるよう、簡単にできて一味変わるテクニックも紹介。例えば卵かけご飯は、生卵のズルズルした食感を嫌う人が多いが、先に白身だけを熱々のご飯とよく混ぜると、白身がふわふわのメレンゲ状になり、そこへ黄身を落として崩しながら食べる。

学生の興味をかき立てる新鮮な驚きもあった。透明なトマトジュースだ。ミキサーにかけたトマトをペーパータオルなどで一晩かけてゆっくり絞ると、うまみだけが抽出された、さらりとした透明なジュースになる。実習ではこれに合わせ出汁と薄口醤油を合わせてトマト茶わん蒸しを作った。具材はモッツァレラチーズ。和でもなく洋でもなく、その先へ踏み越えたような不思議なおいしさが生まれた。「地域の食材にはその土地ならではの食べ方があり、一方で第三者の目からは地元の人も気付かなかった食べ方が提案できる。その両方の面白さがある」と田村さん。

特設サイト制作、産地の魅力も紹介

10周年記念の特設サイトを、卒論を兼ねて制作しているのは経営情報学科4年、グローバルコミュニケーション専攻の豊田モナミさん。「もともと食べるのが好きで、古家先生の授業やたむら塾に参加し、田村さんの『枠にとらわれず、自分のやりやすいようにやっていいんだよ』という言葉に感銘を受けた。サイトを通じて茨城の食材の魅力を伝え、見てくれた人が興味を持って食べに行ってくれたりしたら嬉しい」と話してくれた。

今後、県内各地の生産者などにそれぞれの食材について聞いて回るとともに、過去のたむら塾の中から厳選したメニューも紹介していく予定。現在は特別編として、田村さんのホームグラウンドである築地市場が豊洲に移転する直前に聞いた、タコとマグロの仲卸業者へのインタビューなどを掲載している。
アドレスはhttp://sakura.tsukuba-g.ac.jp/~u1532020/

左から田村さん、古家教授、豊田さん=同