【コラム・中尾隆友】昨日29日のコラムでは、市のクレオ再生の問題点を2つ指摘しましたが、本日はその続きです。

共同出資者サイバーダイン

3つめの問題は、まちづくり会社に20億を出資するのがサイバーダインであることだ。サイバーダインは現時点では潤沢なキャッシュを持っている。しかしながら、企業としての見通しは非常に厳しいといわざるをえない。

私も10年以上前はサイバーダインと同じ施設に入居していたので、その当時から同社への地元の期待は非常に高かったということもあり、専門家として各方面の方々から同社の将来性について聞かれることが多かった。その当時から「5年経っても10年経っても黒字になる可能性は低いだろう」と答えていたのだが、実際に同社は創業以来、1回も黒字になったことがない。今後も非常に厳しい見通しであるのは変わらないと思う。(その理由は今回のコラムとは直接関係がないため割愛させていただく)

市長は「サイバーダインは(300億円の)お金を持っているから大丈夫です」というが、同社が10年後、20年後に経営体力がなくなった時に、大株主と一蓮托生のクレオも同じ運命をたどりはしないかと強い懸念を抱いている。なお、同社がなぜそれだけの現金を持っているのか、市長にはそこまで思いをはせて慎重に発言してもらいたかった。ビジネスの世界ではありえない発言だったので、たいへん驚いたと同時に残念に思っている次第だ。

市場調査が中途半端 リスクの再点検を

最後に4つめの問題は、マーケティングが中途半端だということだ。だから、テナントをすべて埋めることができれば何とかなるだろうという発想に陥ってしまうのだ。坂本栄氏(10月15日のコラム)が指摘しているように、テナントの賃料を周辺の相場の半分程度にしなければ埋められないというのであれば、それは行政による民業圧迫にほかならないし、市が魅力あるプランを提示できていないと暴露しているようなものだ。

マーケティングで大事なのは、具体的にどのような内容でどのような母集団に対して聞くかということだ。「周辺住民がどのような施設やテナントを望んでいるのか」「望むテナントがあればどのくらいの頻度で行こうと思うか」「駅前に西武があった時はどういうルートで買い物をしていたか」「今、主に買い物をしている場所はどこか」「今、どういうルートで買い物をしていることが多いか」「家計簿に占める食費や娯楽費の内訳」など(聞きたい項目はその他にもたくさんあるが)、マーケティングを徹底的に行い、公共性や周囲への波及効果も含め、データを可視化(見える化)することが不可欠だろう。

私は行政をそれなりに経験していたので、行政が持っているデータは宝の山だとわかっている。しっかりしたマーケティングの結果と行政が持っているデータを組み合わせれば、それ相応の良いプランができるだろうし、地元に根を下ろしている民間企業や金融機関も出資を前向きに検討してくれるのではないだろうか。私の経営感覚からすると、今のプランのままでも1年~2年はそこそこのにぎわいを見せるだろうが、長期的な視点ではかなり厳しいと見ているところだ。

市民向けの説明会に出席して率直に思ったのは、市は筑波都市整備や他の近隣の公共施設ともコミュニケーションができていないということだ。時間がなかったといえばそれまでだが、駅前を本気で再生したいのであれば、市が単独で突っ走るのではなく、周辺との緊密な連携・協力は欠かせないはずだ。

現実には、クレオ再生の方向性はすでに決定していて、説明会で市民の意見を一応聞いたというアリバイづくりをしているに過ぎないのだろうが、いずれにしても、市には現行の計画のリスクを再度総点検したうえで、より良い計画に仕上げていってほしいと願っている次第だ。(経営アドバイザー)