《くずかごの唄》23 酷夏の後遺症 わけの分からない病気


【コラム・奥井登美子】日本人が歴史上今まで経験したことのなかったような暑さを体験した私たち。秋になって涼しくなり、ほっとしたとたんに、わけの分からない病気が増えてきたような気がする。

酷暑体験の後遺症。あと何年か経てば、その病気も解明されて、きちんとした病名がつくに違いないのだが、病気ともいえないわけのわからない症候群に、私はあだ名をつけてみることにした。

「声患い」

天気予報で低気圧が近づいてくると、加減が悪くなる人が増えてくる。「低気圧病」。喉が詰まって声が出にくくなる。声わずらいの人も多い。「コエ患いですか?」などと、冗談半分で聞くと、「とんでもない、そんな年ではない。喉が詰まって、声が出しにくいんです」。

「胃もたれ」

「熱中症」という漠然とした病気から派生した後遺症も多い。涼しくなって少しほっとしたトタンに、食欲がなくなって、何も食べたくない、何もしたくなくて、ごろごろしている症状のお年寄りが多い。医者もどうしていいのか解らないらしく、胃腸薬にビタミン剤を入れた処方箋が多い。

「かゆいかゆい病」

男の老人に多い。背中がかゆいと言ってかいてしまう。熱中症でたくさん汗をかいたのに、本人は気がつかない。そのままにしておいて、できたアセモを「孫の手」風の棒でかきむしってしまう。昔はそういう時、孫が来て、可愛い手で優しく背中をかいてくれたらしい。それで背中をかく器具に「孫の手」という名がついた。今の孫は、背中どころか小遣いをもらう時にしか来ない。

「稀勢の里症候群」

「私、お相撲が好きなんですよ。地元でしょう、稀勢の里を応援しているの。負けそうになって勝ったり、勝ちそうになって負けたり。心臓がドキドキしちゃって、見たくて仕方がないのに、心配で見ていられない。心臓に響くんですよ」「テレビを見なければいいのよ」「それが見ないわけにいかないんです」「病名は稀勢の里症候群ですね」(随筆家)