【コラム・坂本栄】先々週、北海道で震度7の地震が起きました。地滑りで山肌がむき出しになった映像も驚きでしたが、道全域のブラックアウトはショックでした。その原因は、1つの発電所に必要電力の半分を依存、ここがやられたため電力需給が崩れ、他の発電所も停止してしまったとのこと。集中の失敗といえます。

同じ週の前半、強力な台風が関西を襲い、海を埋め立てた関西空港が水浸しになりました。滑走路が冠水、使用できなくなりましたが、旧伊丹空港と神戸空港で補完、関西の空の便が全滅するのは避けられたとのこと。分散の成功です。

集中の経済性、分散の不経済はよく分かります。しかし「平時」の経済性は、「有事」には不経済に変わります。良いことが悪いことに変わるのです。

このコラム26回では、ポートフォリオとエネルギーミックスを取り上げました。その中で、金融投資でも電源構成でも、1種類の商品・電源への依存は20~25%に抑えた方がよいと書きました。1つがダメになっても、75~80%が回っていれば何とかなるからです。分散の勧めです。

倒れなかった彫像と墓石

どうも、教訓染みた話になってしまいました。本サイトには馴染まないようですので、後半は身の回りの話に切り替えます。

大地震といえば、3.11を思い出します。発生時、つくば市の関彰商事ビルで関正樹社長と面談しておりました。社長応接室に飾ってあった彫像が倒れないよう、(壊したら会長に怒られると思いながら)社長と秘書と私の3人で必死に抑え、危機を乗り切りました。あの日一番の記憶です。

翌日、親父の墓石が無事かどうかチェックに行きました。驚いたのは、墓園内30基ぐらいの墓石のほとんどが、倒れるか、30~90度ねじれていたことです。石を重ねただけの灯籠はほぼ全滅でした。でも親父の所は無傷でした。他の墓石は背の高い和式でしたが、坂本家は(石の使用量が少ない=価格が安い)洋式にしてもらったからです。見回りに来ていた石屋さんは(修理の仕事が入るぞと)嬉しそうでした。

最近、地下鉄利用を減らしています。首都圏に大地震が起き、生き埋めになるのが恐いからです。この話を中川ヒューム管工業の中川喜久治社長にしたら、建物がある地上より地下鉄内の方が安全ではないかと言われました。地下構造物の専門家の指摘ですから、私の心配は間違いかも知れません。(経済ジャーナリスト)