【コラム・室生勝】このコラムのタイトル画「地域包括ケアシステムの姿」の中心には高齢者が描かれ、その下部に「生活支援・介護予防」、さらにその下に「老人クラブ・自治会・ボランティア・NPO等」が配されている。

「生活支援・介護予防」は、介護保険サービスを用いず在宅生活をしているひとり暮らし高齢者および高齢者夫婦世帯に、要介護状態にならないように自立した生活を継続できる見守りや生活支援のことである。

生活支援には、「買い物」「診療所や病院への通院」「ごみだし」「食事の準備・調理・後始末」「掃除」「散歩・外出」「家の中の修理、電球交換、部屋の模様替え」など、公的サービスではカバーできないものがある。

どの市町村でも、交通に不便な地域や買い物が困難な地域があり、また障がいや高齢に伴う外出支援がなく、閉じこもりになりやすい高齢者がいる。閉じこもりが続けば、足腰は弱くなり、寝たきりへと進みやすく、人との触れ合いがないためうつ状態や認知症になりやすくなる。

公的には市町村サービスとして、高齢者日常生活支援事業(自分ひとりではできない部屋掃除、草取りなどの軽易な作業を依頼・実施する際の費用の一部を助成)、在宅高齢者布団丸洗い乾燥、高齢者タクシー利用料金助成、宅配食事サービス、緊急通報システム―などがあるが、ひとり暮らし高齢者世帯が対象で高齢者夫婦世帯は対象にならない。

後期高齢者夫婦世帯では、お互い助け合って生活できている間はいいが、片方が少しでも助けが必要になると、支える側に負担がかかり、共に支援を必要とする状態になりやすい。

生活支援体制整備事業

ご存じのように、厚労省は2025年を目途に、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を進めている。

2025年は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる年である。これまで国を支えてきた団塊の世代が介護保険サービスを受ける側に回るため、医療、介護、福祉サービスへの需要が高まり、ヘルパーはじめ介護医療職が不足する状況になると言われている。介護保険料も無制限に上げられず、社会保障財政のバランスが崩れるだろう。

そういった状況にならないように、厚労省は市町村単位の事業を進めている。「生活支援体制整備事業」といい、介護保険制度では提供できない生活支援サービスや介護認定を受ける前の段階の高齢者に対する生活支援の充実を図るとともに、地域で支え合う体制づくりを推進することを目的としている。

その主役を担うのが、「地域包括ケアシステムの姿」の中の「老人クラブ・自治会・ボランティア・NPO等」である。(高齢者サロン主宰)