《好人余聞》10 「紙なんて、丸めてゴミにされちゃうけど」酒井志保さん

ペーパークラフト作家 酒井志保さん

【コラム・オダギ秀】人生という旅の途中で出会った人たち、みんな素敵な人たちでした。その方々に伺った話を、覚え書きのように綴りたいと思っています。

たかが紙。風に吹かれれば飛んでいってしまい、丸めるとゴミになるようなもの。そんな紙というものに、人生を乗せてしまったような人に会った。つくば市のペーパークラフト作家 酒井志保さん。紙に丸みをつけて重ね貼りする半立体作品を得意としている。作品は、繊細な作り込みと、表情豊かなキャラクターに定評があり、優しい暖かみある作風で、様々な雑誌の表紙などに使用され、たいへんな人気を呼んでいる。

「ペラペラな紙が、神様のカミでもあるのかな、なんて思うことがあるんですよ。だって、そこから、無限にイメージが膨らむんです。紙って、身近なものだけに、クシャクシャになっているとただのゴミや紙切れなんだけど、作品になると、大切にしてくださる人にとっては、ただの紙ではなく、アートになり、もっと大切なストーリーを持つようになるんですね」

飾り物やプレゼントのオーダーも多いそうだが、酒井さんは、出来る限りの聞き取りをするそうだ。たとえば、お誕生のお祝いなら子どもさんの顔の写真を見せていただいたり、どんな好きな色の着物を着せたいのかと親御さんの気持ちを伺ったり、後々までもその作品が、意味を持って大切にしていただけるように、データを集めまくる。

作品は人生そのもの

「すると、ただの紙が、どんどん意味のあるものになって行くんです。たとえば、お爺ちゃんが、お孫さんのお節句に吊るし雛をお祝いにプレゼントする。その吊るし雛には、色々な意味が込められているんですね。食べ物に困らないようにとか、どうしてこのような紙を使ったかとか、この柄は古来どんな意味があるかとか。すると、それが、プレゼントしてくれたお爺ちゃんの気持ちとして、いつまでも残っていくんです」

作品に囲まれて、彼女は楽しそうに笑った。

残っていくのは、酒井さんの作品のようでいて、むしろ彼女の人生そのものではなかろうか。丁寧にこだわり、依頼された以上のものを作ろうとする彼女の人生こそが、作品以上に残っているのだと思った。酒井さんの人生にとって、ペーパークラフトは、どんな意味があるのですかと、乱暴な質問を投げてみた。

「飽きないで付き合って行けるものだから、出会えて幸せだったと思う」。その言葉は、人生というものに出会えて幸せだ、と言ったように聞こえた。(写真家)

▼酒井志保さんの教室と作品ショップ : クラフトP-BOX  つくば市真瀬467-3 電話& FAX : 029-838-0302(土・日)  営業時間 : 毎週 土曜・日曜 13:30〜18:00 http://craft-p-box.com/