【コラム・相沢冬樹】筑波山地域ジオパークが認定されたころ、地球科学を専攻する筑波大学の学生に「最近の受験では、理科で地学を選択しやすくなったのか」たずねたことがある。「いいえ難しいっす。地学で受験できる大学は限られているし、今でも教える高校は少ない。自分も履修できなくて、入試は物理と生物で受けました」。

僕は大学入試センター(共通一次)試験が始まる前の世代だが、学校教育での地学の扱いにずっと納得いかなかった。理科4科目のなかで、物理、化学、生物に比べ地学だけが冷遇されてきた。しかし、天文(宇宙)、地質、地球物理、気象の4分野にわたる地学には、興味を惹くテーマがそろっている。「理科離れ」が叫ばれて久しいが、高校で地学を選べたなら事情はだいぶ違ったろうと思えるのだ。

微積分に歯が立たず、文系に進んだ僕も、社会に出てからは折にふれ理系との接触が刺激となった。高エネルギー加速器研究機構の一般公開をのぞいたり、筑波山周辺のジオサイトをめぐるトレッキングに出かけたり…、つくばはその機会にこと欠かない。

挙句に僕は、総合科学研究機構(CROSS、横溝英明理事長)という一般財団法人に身を寄せた。文系・理系にまたがるサイエンスをカバーして、クロスは「文理融合」の意味となる。格調高く総合科学を冠するも、足場は発祥の地元に置くのがユニークだ。

つくばの産学官連携に取り組もうとCROSSと称してちょうど20年、この間ずっと本部は土浦市内にあった。2011年からは東海村の加速器施設J-PARCにある中性子ビームラインの利用促進を業務の主力にしている。

太陽系と地球誕生の謎に迫る

その財団が地域社会との交流機会に設けているのが市民公開講座で、今年の「CROSS2018」は18日(土)午後1時から開く。会場は筑波銀行つくば本部ビル(つくば市竹園1丁目)10階大会議室、開催タイトルを「太陽系と地球誕生の謎に迫る」と打ち出した。

「地球外物質から探る太陽系の誕生と天体進化」三河内岳(東京大学総合研究博物館教授)、「チバニアンと地質時代」岡田誠(茨城大学理学部教授)の2講演が予定されている。ともに地学ファンには聞き逃せないテーマである。

遅れて地学の徒となった僕は、千葉県市原市にある「チバニアン」の地層を訪ねたりした。地質時代境界の「千葉セクション」は日本最初の国際標準模式地候補となり、地質時代名称として「チバニアン」が提唱されている。その研究チームの代表が岡田氏で、講演では地質学から地球の歴史に迫り、地磁気逆転や氷期―間氷期の変化などの話をするということだ。(ブロガー)

▽CROSS2018:入場無料。問い合わせ・事前登録は電話(029-826-6251)かメール(tsukuba@cross.or.jp)でCROSS事務局まで