【コラム・室生勝】連日続く猛暑で高齢者の熱中症による死者が出ている。茨城県でも後期高齢者の女性が自宅で意識もうろうとした状態で見つかり、病院に搬送された。高齢者本人は熱中症と気づかず、あるいは気づいてもSOSを発信する術(すべ)を持たず、不幸な転帰となることもある。

後期高齢者のひとり暮らしや高齢者だけの世帯に対する安心安全を保証する体制ができていれば、熱中症だけでなく、脳卒中、心筋梗塞、誤嚥性肺炎、転倒による骨折などの緊急時にも対応できるだろう。緊急事態は、介護サービスを利用していない自立した後期高齢者でも起こりうるから注意すべきだ。

ひとり暮らしの緊急時に対応するサービスとして、市町村の在宅高齢者福祉事業「緊急通報システム」がある。設置された緊急通報機器から離れていても通報できるペンダントがあり、常時身に着ていれば通報できるが、着けている高齢者はほとんどいない。

つくば市には、ひとり暮らし高齢者・障害者・健康に不安をかかえている人たち(難病および介護保険サービスの対象となる特定疾患患者※)の緊急時に対応する、「つくば市救急医療情報便ツクツク見守りたい」がある。だが十分に周知されていないようで、登録者は少ない。

短縮でワンタッチ通報

高齢者の集まりに講話を依頼された際、緊急時に携帯電話やスマホで主治医や救急隊に通報できるかを尋ねたことがある。外出時は持参しているので通報できるが、自宅にいるときは手元に持っていないことが多いようだ。短縮ダイヤルをワンタッチで通報できることを知らない人もいた。

現在、ほとんどの高齢者が携帯電話かスマホを持っている。トイレに入るときも入浴時にも、手の届くところに置き、すぐ使えるようにしておいてほしい。特に、後期高齢者に強くお願いしたい。

認知症初期のひとり暮らし高齢者や後期高齢者だけの世帯では、緊急時には気持ちが動転して携帯電話やスマホを操作できなくなることが想定される。市町村は現在のいろいろな緊急時サービスを見直し、新たなシステムを考えるべきだ。

後期高齢者が増えつつある現在、市町村は認知症発症リスクが高いひとり暮らし後期高齢者や後期高齢者だけの世帯が、自宅で安心安全な生活が継続できているかどうか調査すべきだ。その結果によっては、24時間の見守りがある集合住宅などを住み慣れた地区で提供することを考えねばならない。(高齢者サロン主宰)

※ がん末期、関節リウマチ、パーキンソン病、脳血管疾患など16疾患の40歳以上65歳未満の人