【コラム・室生勝】地域で最も包括的な支援を必要としているのは、ひとり暮らし高齢者、高齢者夫婦世帯、それから高齢者と障がい者の世帯である。ほとんどが後期高齢者で、年齢を重ねるとともに認知症が合併してくる。

認知症で生活に支障をきたしている高齢者を支えるには、認知症の人本人と相性がよいサービス提供者がケアチームの要になるとよい。チームが認知症の人に寄り添ったケアを提供しても、本人と家族の関係がよくないと本人は安定した生活を送れない。

家族が介護疲れで、つい口調が強くなり関係が悪化することがよくある。家族関係が悪くなると、不穏や妄想などの周辺症状が多くなり、介護度が軽度でも在宅生活が難しくなる。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム=特養)でショートステイを定期的に利用できればいいが、要望が多く応じきれていない。

在宅生活継続が困難になってきた高齢者の受け皿として、公的な特養がある。だが入居希望者が多く、厚労省は2015年度から入所基準を要介護3以上とした。要介護1、2でも、やむを得ない事情による入所「特例入所」の扱いがある。対象は、認知症、知的・精神障がい、被虐待、単身、高齢者のみの世帯などの高齢者で、在宅生活が困難な方。しかしどのケースでも年単位の入所待ちになる。

柏市豊四季台の事例

特養以外では、要支援や要介護1、2でも入れる民間の有料老人ホームがあるが、費用がかかる。特養あるいは老人ホームに代わる住まいとしては、サービス付き高齢者住宅(サ高住)がある。介護や医療と連携して高齢者の生活を支援するため、サービス付き住宅の供給を増やそうと、11年、高齢者住まい法が改正された。

当時、つくば市の調査では、現在の住まいを希望する比率が高かったので、サ高住の建設を市街化区域に限り認め、市街化調整区域には認めなかったようである。16年度の同市の住民アンケート調査では、要支援1から要介護5の78名に「入りたい施設」を聞いたところ、特養34.6%、有料老人ホーム19.2%、サ高住15.4%という回答で、サ高住と老人ホームの間に大差はなかった。

現在つくば市は、民間事業者や市民との対話を通じ、旧庁舎跡地の利用法を検討しているが、庁舎跡再開発にサ高住建設を望む声もあるようだ。庁舎跡は、その圏域の人たちにとっては通い慣れた場所といえる。

住み慣れた地区を再開発して建設されたサ高住が、柏市豊四季台にある。1964年に建てられた集合住宅群は順次建て替えられ、UR賃貸住宅や民間マンションが立ち並ぶ中に、クリニック、訪問看護ステーション、ヘルパーステーションなどが併設された6階建のサ高住がある。(高齢者サロン主宰)