【コラム・浅井和幸】人から怒られたり、バカにされたりしやすい人は確実にいます。それで、苦しくなって相談を持ち掛けて来る人も少なくありません。「なめられないようになるための方法を知りたい」ということです。

私自身は「なめられている」と表現はしませんが、「なめられている」状態から抜けるための方法として、単純に思い浮かぶのは次の3点です。

1. その空間での能力をつける。コミュニケーション、仕事、腕力、組織(強い人と組む)などの力を使う、つける。
2. 人をなめるような人とは付き合わずに、尊敬できるような素敵な人とだけ付き合う。
3. 挑戦をせずに出来ることだけを行う。能力を伸ばす努力や工夫はせず、自分より弱い立場の人とだけ付き合う。

なめられない人間になると、周りの人間が着飾って近寄ってくるので、その人の本質が見えにくく、後々、手痛いしっぺ返しを受けることもあります。ちやほやされ、うぬぼれてしまうこともあります。結果、自分自身の成長にマイナスになることもあるので、よいことばかりではありません。

これらの逆が、「なめられる状態の利点」となりますが、一つの例を紹介します。障害者に関する、ある集まりがありました。そこは、障害者も、家族も、支援者も、ざっくばらんにワイワイ話が出来る場所でした。

そこに初めて参加するAさん。「自分には何ができるか分かりませんが、何かできることがあったら言ってください。何でもやります。支援者というわけでもありませんし、むしろ私が、皆さんから教えていただければと思います」と、自己紹介しました。

特に経験はないけれど、何かしら助けになればと、謙虚で感じのよい方でした。勉強熱心なAさんは、関わりを続ける中で、あるNPO法人が認定している資格を取りました。とても頑張っているなと思っていたのですが、参加者のBさんから相談がありました。

「すみません。Aさんのことなのですが、何かの資格を取ったころから、何でも相談に乗ってやるからという態度をしてきます。偉そうで押し付けがましい態度で、腹が立ちます」

私がいる場所では、謙虚で勉強熱心だったAさんは、私がいない所では少し態度が変わっていたようです。それぞれの言い分を別々に聞き、事態は収束しました。そこで得たもう一つの事実は、Aさんは別の場所で、周りの人からなめられていて辛かったとのことでした。

人間関係を、なめる、なめられる、という捉え方ではなく、どの様に自分や周りの力を発揮するか、どの様に楽しむかという視点で考えて欲しいな、というエピソードでした。

今回は、このように行動した方がよいというものではなく、なめられやすい、怒られやすいことの利点を2つ書いて終わりにします。
▽相手の本質をつかみやすい。それを利用して場を動かしやすい。
▽自分の短所を見つけやすい。それを利用して成長速度を早くしやすい。(精神保健福祉士)