【コラム・冠木新市】5月20日(日)、つくばイノベーションプラザで『つくばまちづくりシンポジウム―中心市街地のヴィジョンを考えよう―』(つくば市主催)が開催された。若い女性は少なかったが、場内は100人で満席だった。知人は、市職員が多いと言っていたが、市民活動家や市議の姿も目立った。

配布資料は「つくば中心市街地まちづくりヴィジョン(案)世界のあしたが見えるまち」というA3用紙1枚。そこには「リラックス×遊び心」「科学技術の恩恵×新たな価値の創造」「ローカル×持続可能性」の3項目の下に、<イメージ>として、それぞれ5つの願望と小イラスト5点、計15のカットがあった。選挙公約風の印象で具体的な内容はなかった。

五十嵐立青市長は「このヴィジョンは第1段階です。第2段階は目標設定と戦略、第3段階はマスタープラン発表となり、実行は秋ごろから」と語っていた。2017年7月にまちづくりアドバイザーが就任して、ほぼ1年が経過した。本当にこれだけなのか。何か裏があると思えてならなかった。

今年、開業35周年記念を迎えたオークラホテルのパンフチラシ『オークラつくば』(vol.27)には、『お祭り騒ぎスケジュール』として、来年3月までのレストランとイベントの企画が目白押しで載っている。

さらに「2019年もつづきます!」とのコピー。また、地元団体とタイアップして新たな行動計画策定中とあり、筑波大学応援イベント企画、社会貢献活動が具体的に示され、意気込みが伝わってくる。6月中にアイアイモールの最後の飲食店「一成」も閉店予定の中、応援したくなるヴィジョンとなっている。

スピルバーグ監督「未知との遭遇」

ヴィジョンで思い出すのは、スティーブン・スピルバーグ監督の作品『未知との遭遇』(1977年公開)である。UFOを目撃した市民が一様にあるイメージを受け取る。1人の女性は、そのイメージを何枚もの絵に描いていく。それは巨岩のような山のような奇妙な形である。後で、デビルズタワーという実在する岩山だと分かる。そのイメージに突き動かされて市民が岩山めざして集まってくる。ヴィジョンとは人々の行動を刺激するものである。

自分だったらヴィジョン(案)をどう表現するか考えた。人は謎を好み得体の知れないものに興味を抱く。松見公園の展望塔、エキスポセンター、ノバホール、筑波銀行前の時計台、さくら大橋、大清水公園、国際会議場などに隠されたピラミッド群をイラスト化し、説明を省略してヴィジョン(案)とするだろう。

後日、団員たちに市の配付資料を見せて感想を求めたところ、口の悪い団員が「餡(あん)のないアンパンですな」と返ってきた。

私はハッとした。今回のヴィジョン(案)は内容の無さをさり気なく隠し、発表と実行を先延ばしすることで市民の心を刺激、まちづくりへの参加へと誘導しようとしたのではなかろうか。そうだとしたら、遊び心に満ちた凄いヴィジョンと言えるかも知れない。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)