《食う寝る宇宙》15 見えない太陽フレア でも用心用心


【コラム・玉置晋】僕は人工衛星を見守る仕事をしている関係上、太陽の爆発、太陽フレアを注意深く観察する必要があります。もっとも僕の場合は趣味的な要素が強くて、社会人学生として「宇宙天気防災」研究を行っているわけですけどね。

そうそう、NEWSつくばの人たちは意地悪で、原稿の段階では「宇宙天気防災研究者 見習い」と書いているのに、掲載の段階で「見習い」を外してハードルを上げてくださいます。困ったメディアです。

僕達は、高度3万6000㎞に配置されている人工衛星から配信されるX線強度トレンドの上昇から、太陽フレアの発生を判断しています。しかし、困ったことにX線強度が上がらない、いわば「見えない太陽フレア」があります。

僕は大学院の研究の一環で「宇宙天気災害年表」を作っています。過去の宇宙天気データを評価しつつ、宇宙天気が社会インフラに何らかの影響を与えた事象を文献などから抽出して、年表形式にまとめる地味な作業をやっておるわけです。

現在から過去に向かおうか、過去から現在に向かおうか悩みましたが、過去からみると必要なデータが無いという危険な香りがしましたので、前者を選択しています。

2017年12月を始点に、本コラム執筆時点で2014年1月までタイムスリップしております。ちなみに、14年の流行語大賞は日本エレキテル連合の「ダメよ〜、ダメダメ」でした。なんだか、随分と昔な感じがします。

14年1月8日、米バージニア州のアメリカ航空宇宙局(NASA)のワロップス射場では、「シグナス無人補給船」がアンタレスロケットに搭載され、発射準備が進められていました。行き先は国際宇宙ステーションです。民間会社による「商用サービス」として初めての補給ミッションでした。

この辺りはアメリカのすごみを感じます。しかし、この日、ロケットは打ち上げられることはなく、翌日に延期されました。その理由は、宇宙の放射線が通常の1000倍程度に増えたからです。ロケットの電子機器を故障させる恐れがあったので、予防措置をとったわけです。

放射線増加の原因は、1月6日に太陽の裏側で発生した太陽フレアでした。太陽は地球からみて27日ぐらいで自転しています。数日前に裏に回ったばかりの黒点で発生した爆発時のX線強度のトレンドは、ほんのちょっぴり上昇しましたが、このレベルではすぐに気づくのは至難の業です。

このとき、放射線は20分弱で地球周辺に到達しました。初弾は光速の40%に相当する速度でやってきたと推定されます。その後、数日間、地球周辺の宇宙空間は普段より多めの放射線に満たされましたが、幸い、ロケットは問題なく打ち上げられ、国際宇宙ステーションに物資が届けられました。(宇宙天気防災研究者)