【コラム・玉置晋】1977年8月20日、米フロリダ州ケープカナベラル空軍基地からタイタンⅢロケットで宇宙に飛び立った「ボイジャー2号」が、41年の時を経て、太陽圏「ヘリオスフィア(Heliosphere)」を脱出した模様です。太陽圏とは、太陽から吹き出す「太陽風」の影響範囲をいいます。太陽風の進行が銀河系の星間物質により止められる境界「ヘリオポーズ(Heliopause)」が太陽圏の外壁です。

ボイジャー2号に搭載されているプラズマ観測装置のデータによると、2018年11月5日を境に、太陽風粒子が急減する一方で銀河宇宙線が急増したことから、NASAはボイジャー2号がヘリオポーズに到達したと発表しました。姉妹機の「ボイジャー1号」が12年8月25日、人工物として初めてヘリオポーズに到達しています。

ボイジャー2号は、恒星間空間を飛行する2基目の人工天体となりました。18年末現在、ボイジャー2号は地球から180億㌔離れた所で機能しており、ボイジャー2号から地球に送信データが届くまでには16時間以上かかるそうです。そして、太陽に対して時速5万5千㌔で遠ざかっています。

おじさんになった僕は再び感動

ボイジャー2号は、太陽系の外惑星である木星(1979年接近)、土星(81年接近)、天王星(86年接近)、海王星(89年接近)のグランドツアーを初めて実現した探査機です。コラム第1回で述べましたが、80年代、僕は宇宙に憧れる子供でしたので、親に科学雑誌を買ってもらって、ボイジャー2号から送られてきた惑星の写真を見て心躍っておりました。

子供のころに感動を与えてくれたボイジャー2号が、おじさんと呼ばれる年齢になった僕に、再度感動を与えてくれる。天文学や宇宙開発の意義というのは、常に議論の対象となります。ボイジャー2号の太陽圏脱出のニュースだって、別に僕の給料がアップするわけではないし、日々の生活に直接役立っているわけではありません。

でも、この高揚感はどんなにお金を払っても得ることはできないだろうなあ。昔の子供としては、今の子供たちにも同じような高揚感を味あわせてやりたいと思います。そして、ささやかではありますが、40年前、ボイジャー2号を宇宙に送り出した先輩方に祝杯を挙げたく、ビール(飲めないのでノンアルコール)を買いに出かけようかな。(宇宙天気防災研究者)