《続・平熱日記》27 「ミトチャ」(美味しい)は幸せ


【コラム・斉藤裕之】ある日のランチタイム。牛久のネパールカレーの名店DIPIKAでいつものキーマカレーを注文。「うむ?」いつもと違う味がする。さてはスパイスの配合でも間違えたかな。1週間後、またランチに訪れた。いつものキーマカレーをクールに注文。「いつもの味と違う!」。

これではっきりとしました。DIPIKAのコックに非はありません。私の味覚がぶっ壊れていたのです。何となくおかしいとは思っていました。みそ汁の味やそばのつゆがちっとも美味しくない。特に舌の先端や両サイドに妙な違和感があって、何を食べても思い描く味と違うのです。

なになに… 味覚障害は亜鉛不足が原因? 急に食生活が変わったとか思い当たる節もないのですが、とりあえずドラッグストアでサプリを買って飲んでみました。結果、効き目ナシ。このような状態で1か月が経ちました。胃の手術を経験した私にとって食事はとても大切な営みです。このまま不幸な食事を続けるわけにはいきません。

キーマカレーの味が回復

しょうがない。病院へ行こう。「こりゃ多分鼻が原因ですね」。かなり深刻な面持ちの私に、間髪入れず言い渡された意外な診断。「は・な?」。確かに人間の体は複雑につながっていて、例えば肩こりの原因が歯並びなんてことはあるようですし、嗅覚と味覚は密接な関係があることは事実。

しかし私が、確実に舌がヘンだと主張するのを意に介さず、原因は鼻だと断言するお医者さん。「はーそうですか」。従うしかない私は、鼻に蛇腹のパイプのようなものを装着し気体を吸入。処方された薬は特に変わったものでもなさそうですが、騙されたと思って飲むしかありません。

以前、嗅覚の障害は障害としては重いものだと聞いたことがあります。例えば、腐ったものを食べたり、ガス漏れに気が付かなかったりと、生命に関わることがあるからだとか。電車の優先席には、見た目に明らかなハンディキャップの絵がデザインされていますが、見えざる障害というのも案外多いのでは。

さて1週間が経ちました。途中2錠服用の薬を1錠しか飲んでいないのに気づき、効果が危ぶまれましたが…。完全復調ではないものの味覚は戻りつつあります。それを確かめるには、いざDIPIKAへ。いつものキーマカレーを口に運びます。「ネパール語で美味しいはなんていうの?」「ミトチャ」です。「ミトチャ イズ ハッピーね!」。(画家)