【コラム・玉置晋】8月末のある朝、「茨城県が宇宙ビジネス支援に乗り出したぞ」と、LINEでたたき起こされました。たたき起こした犯人は、僕の指導教官である茨城大の野澤恵(のざわ・さとし)先生です。LINEには、ある新聞の1面のキャプチャが貼られておりましたので、眠い目をこすりながら、コンビニに新聞を買いに行きました。

いばらき宇宙ビジネス創造拠点計画

「いばらき宇宙ビジネス創造拠点プロジェクト」の詳細は茨城県庁のホームページを御参照ください。僕には「茨城県、よくぞやった!」「ちょっと待て、早いよ!」という2つの想いが交錯しています。

僕の野心的テーマ「宇宙天気災害から茨城を守る」の発動トリガーはまだ数年先、2020年を目標としていたからです。宇宙天気災害をじっくり学ばなければならない、よし、大学院のドクターコースに行こうかと覚悟を決めていた所で、このニュース。だから「早いよ!」です。

このコラムの末尾に「宇宙天気防災研究者」と書いてくださっていますが、これは、NEWSつくば編集室の御好意なのか、嫌がらせなのか(笑)で、原稿にはいつも「宇宙天気防災研究者(見習い)」と書いております点、ここに記します。

100~1000年に1度の低頻度激甚災害

しかし、「宇宙天気防災」の難点は、この手の災害の特徴として「低頻度激甚災害」なのです。例えば、地震災害の場合は、100年~1000年に1度の頻度で、数十の自治体が壊滅的な被害を受ける規模のものです。100年~1000年に1度の災害に対して、ビジネスを成立させるのは非常に困難です。

昨今、地震保険をはじめとした地震ビジネスが限定的に成立しているのは、我々は東日本大震災や各地で頻発する大地震を経験したからです。一方、宇宙天気災害はどうか?前回の大規模災害は1859年の「キャリントン・イベント」で、もうすでに100年以上前。

今や世界はICTネットワークで結ばれ、生活の中に宇宙技術やサイバー技術が入り込む別次元の時代に突入しています。「悲劇を経験せねば」動かないことは、我々人類の歴史が知るところです。次の宇宙天気災害で、人類ははじめて経験することになります。そして、後悔します。「あの時、準備しておれば」と。

終末世界を説く宗教的な話?

宇宙天気災害は、地球規模の災害となるため、被災しても外国から支援は来ません。さて、ここまでの話の展開で、読者の皆さん、「うさんくさいなあ」と思いません?これ、終末世界を説く宗教的なお話に接近しています。残念ながら、この話の展開ではコンセンサスを得ることは難しいでしょう。

僕は宇宙が好きで、宇宙天気の勉強を始めたからこそ、「これはヤバいぞ」と気づいてしまいましたが、普通は宇宙天気というワードを聞く機会はまずありません。その結果が認知度5%(コラム21参照)です。

というわけで、現時点で、宇宙天気防災をビジネスとして展開するのは、なかなか難しそうだと、事業計画書の作成の筆が止まっているのが現状です。迷える子羊をお助けください。
(宇宙天気防災研究者)