【コラム・室生勝】つくば市社協の地域見守りネットワークは、区会や民生委員の人たちの協力もあって点から面へと活動は広がり、「近助」とも言える近所の人たちの見守りや気づきで、孤立した高齢者が見出されている。

孤立は健康状態の悪化で外出できない身体的原因、無気力やうつ状態、認知症といった精神的要因、地域に知人がいない、あるいはなじめないといった環境要因で起こる。

無気力やうつ状態が引き金となり、あらゆることに無頓着になる状態のセルフネグレクト(自己放任)は、本人の意思で支援を拒否しているように見える。しかし、親しい人が亡くなるなどのつらい経験、認知症や精神疾患などによる判断力の低下、家族からの虐待などによる生きる意欲を失っている場合もあるので、注意すべきだ。

他人に対する不信感を持っている人も多くいるので、まずはコミュニケーションをとり、信頼関係を築くところから始めていくことが重要である。

最近は、援助してくれる身内、親類がなく、高齢のうえ病気や障害などで働きたくても働けない。また、不動産があって売ることができず、毎日の生活費に困っている人たちが増えている。

我が国では生活保護受給世帯数が増え続けている。中でも高齢者世帯の増加率は高い。厚労省が2014年に行った調査によれば、65歳以上の生活保護受給者のうち、年金を受給していた人の割合は47.8%。残りの52.2%の人は、年金収入が一切ない無年金者である。

ちょっとした支援から始める

近所の人たちの情報で、ふれあい相談員が区会や民生委員の協力を得て、家の外からの声かけに始まり、玄関先での会話へと進み、困っている状況を知ることになる。玄関で、大声で呼びかけるのは避けたほうがよい。

玄関先の会話へと進まない人には、キャリアがある保健師に協力を依頼する方法もある。後期高齢者は壮年期に各圏域の保健センターで健診や事後指導で保健婦に世話になった。「市役所の保健婦です」と声かければ玄関を開けてくれるだろう。

困っている状況が少しずつわかれば、ちょっとした支援から始めるとよい。手作り料理とゴミ出し袋を持って行く。高齢者の表情が和らげば、受入れてくれたと思っていい。困ったことがないか聴き、支援を求められなければ、また近くに来たら寄ると伝えて訪問を終える。相手の受け止め方を観察、配慮しながら支援する方法を考えてほしい。

孤立した高齢者が手料理やゴミ出しを受け入れるようになれば、近所への買い物支援に結びつき、高齢者の集まりにも誘いだす機会になる。社協のふれあい型食事サービスを利用するのもいい方法だ。民生委員が、ひとり暮らしや高齢者のみの世帯の訪問調査から、さらに生活状況を知るときによく利用されている。

見守り活動から孤立した高齢者に必要な生活支援サービスの提供は、地域の高齢者にも範囲を広げたのが「生活支援体制整備事業」である。モデル圏域だけでなく、各圏域、各地域でできることから始めるべきだ。(高齢者サロン主宰)