土浦の骨董(こっとう)品に熱いうんちくを傾ける同市下高津、矢口義家さん(76)が、地元で人気を集めている。今年4月、同市中央、中城不動院・琴平神社参道でスタートした蚤(のみ)の市「つちうら亀の市」(同実行委員会主催)がきっかけ。矢口さんは亀の市の協賛企画として8月から連続開催されている「古美術の見方・楽しみ方教室」(土浦界隈=かいわい=まちづくり研究会主催)の講師を務めている。
矢口さんは古美術商(古物商)の免許を持つ。博物館・美術館の鑑賞歴35年、骨董品収集歴10年、焼き物研究歴8年と、古美術品と長くかかわってきた。
出発点は、博物館好きの当時中学生だった娘と一緒に各地の博物館を見て回り、数々の展示品に魅せられたこと。「以来35年、古美術品に魅せられ、のめり込んできた」という。
市観光ボランティアガイドとしても活躍している。「新人のボランティアを指導するためにも、古美術教室で話すことで話術が身に付き、役に立つのではないかと思った」と講師を引き受けた理由を話す。
第1回の古美術教室は8月26日「焼き物編」と題して、同市中央、中城通りの琴平神社境内にある井戸端庵で開催された。当日は厳しい暑さだったが、申込者が予想を上回り30人を超えたため、冷房設備のある1階から冷房のない2階に会場を移した。参加者は暑さをものともせず矢継ぎ早に質問し、矢口さんは分かりやすく丁寧に答え、解説。参加者の熱気が酷暑を凌駕(りょうが)した。
第2回は9月30日、「茶道具編」と題して開催され、23人が参加した。自慢の茶器を持参する参加者もいた。矢口さんも自ら収集した茶道具の中から数点を持参し披露、順番に回され、参加者はじかに手に取り手触りを楽しんだ。
土浦は江戸時代から城下町、宿場町として栄え、明治、大正、昭和の時代は商都として繁栄し古い家並みが残る。高齢化や人口減少に直面する近年は、後継者がいないなどから取り壊される旧家が中心市街地でも目立つ。
矢口さんは「道端に貴重な物があっても気付かない人は行ってしまう」と語り、古美術に興味のない若い世代が、先祖代々の土浦の家宝をフリーマーケットなどに出し、散逸してしまうことを憂えている。「古美術に興味のある人に、ぜひ自分の後を継いでほしい」と矢口さんは語る。(鈴木萬里子)
◆第3回古美術の見方・楽しみ方教室は10月21日(土)、「土浦の文化財」と題して井戸端庵で開催する。前半は近隣の寺を訪れ仏具を見学、後半は井戸端庵に戻りその解説をする。資料代500円。問い合わせは「土浦界隈まちづくり研究会」伊藤春樹さん(電話090・4059・4860)
◆第2回つちうら亀の市は11月4日(土)、同市中央、中条不動院・琴平神社参道と境内で開催。古美術、古書、古道具などのお宝も並ぶ。