【山崎実】「種子法廃止って何?」—今、都市、農村部を問わず、種子法廃止がホットな話題になっている。政府は今年2月、民間活力の導入を理由に同法を廃止。農業の現場や消費者からは「将来、外資系を含む民間企業の参入で種子価格が高騰、ひいては値上がりが続くのでは」と警戒する意見がある。一方、種子生産当事者である県は「基本的にはこれまで通り、県が責任をもって生産するので心配はない」(県産地振興課)としている。
種子法は、戦後の食糧安定供給のため、稲(コメ)、麦、大豆3品目の種子を、国、都道府県が責任をもって生産、普及することを目的に制定された。稲のコシヒカリ等、身近な品種は都道府県のオリジナルとして同法に基づき開発されてきた。
ところが、産地間競争の激化に伴い、民間開発の種子も奨励品種に採用する道を開けるべき(民間活力の導入)との意見が出てきたため、政府は規制改革の一環として同法の廃止を決め、国会も通過し成立した。県内でも既に一部地域で「ミツヒカリ」「とねのめぐみ」等、民間開発の種子による稲が作付けされているが、限定的かつ契約栽培の域を出ていない。
この主要農作物種子法廃止の動きは全国的に影響を与え、茨城県内でもJAグループや県採種部会協議会等から「法廃止後も、優良な種子の安定確保のため、引き続き県が現行の役割を担ってほしい」旨の要請が出ていた。そこで、県は今年3月23日付けで新たに「茨城県稲、麦類及び大豆種子の生産と供給に関する要綱」を策定。従来通り、関係機関と連携して種子生産に取り組むことにした。
法廃止後も条例で対応しているのは、埼玉、新潟、兵庫の3県のみ。茨城県と同様に要綱を定めて種子生産を継続する道府県は41に上るという。
不安要因はないのか。県が指摘するのは、外圧だ。理由は、この問題がTPP(環太平洋経済連携協定)の協議事項に含まれているためで、米国等との交渉の行方も気がかりなところ。「種子をめぐる国際的な圧力だけは注視していく必要がある」と同課。現時点で「心配はない」とはいえ、県は今後の推移を注意深く見守っている。