【コラム・斉藤裕之】またまた日帰り圏内ドライブのお話です。県内、近郊はあらかた制覇。そこでかみさんいわく「今日は川越」。

川越? 上京してすぐに住んだのが西武新宿線の田無。今の西東京市。三畳足らずの賄(まかない)付き予備校生用の寮。片栗粉のたっぷり入ったマーボー豆腐やキャベツがペロンと浮いたみそ汁が懐かしい。その経験からすると川越は新宿からはるかかなた。

遠くない? スマホで検索すると、牛久から1時間ちょっとだというので、頭の中で、牛久、新宿、川越の位置関係を関東平野の地図に落とし込みつつ圏央道に。坂東を抜けると久喜白岡? そして桶川? かつて浦和に住んでいたので、東北線の路線図をイメージしてますます混乱。

すると、ありゃま。間もなく川越到着。東京を起点に作られた私の頭の中の地図を圏央道はぶち壊してくれました。

それにしてもすごい人出。休日とはいえ、前に進むのもままならないほどの観光客。お昼時ということもあり、食べ物屋には長蛇の列。例えば、どこにでもありそうな団子屋。いやもしかしたら本当に美味なのかも。いずれにせよ、そんなに並んでまで食べたいかと思っちゃう。

とにかく、見応えある街並みも、食い物屋に群がる人に完全に負け。「街並みは重厚、それにしてもすごい人口、おれは閉口…」。

インバウンド リバウンド 

それから、割合はわかりませんが、外国人の方もかなりいらっしゃる。政府は観光立国を目指しているらしいのですが、外国人目線になってみると、川越はどんな風に映るのでしょう。やたら耳にする「ニーマルニーマル」。世界中からやって来る大勢の人々を、東京はちゃんとおもてなしできるのでしょうか。川越でこうなのにキャパ足りんのかな?

「政府が旗振るインバウンドー、そんなに食ったらリバウンドー、おれのイライラおさまらんどー」

どこもこの調子なので、お店での食事はあきらめて、普段は絶対入らないコーヒーチェーン店でスカシたサンドイッチを食べました。また、その外観が洗練された日本家屋風でオシャレ。抜け目のない商売をなさいます。

ということで、旅の終わりは近所の直売所。栗を見つけて購入。そういえば、川越は江戸から十三里のところにあるから、焼き芋の売り文句が「九里(栗)より美味い十三里(芋)」というのだと聞いたことがあります。

奇しくも、ちょうど江戸から十三里ほどの牛久で、今日のところは九里ご飯。芋は茨城にもいっぱいありますから。(画家)