【コラム・玉置晋】1950年代に人類が宇宙に進出してから70年。宇宙時代において、宇宙天気が社会インフラにどのような影響を及ぼしてきたか。人工衛星を破壊したり、地上で停電を発生させたりしてきましたが、僕はその歴史を知りたい。
70年間の宇宙天気災害を俯瞰(ふかん)するために、人工衛星や地上の観測で得られたデータと災害の事例を収集し、ついにまとめました。名付けて「宇宙天気災害年表」。
ここではお見せすることはできませんが、いつか、ウェブ上で見られるように整備し、公開できるとよいですね。オリジナル版はエクセルで1000㌻を超える大作です。大学院には研究レポートとして宅配便で送りましたが、重くてごめんなさい。
問題は次のステップです。宇宙天気災害のきっかけの多くは太陽の現象にあり、その影響が地球の周辺に伝播(でんぱ)し、社会インフラに影響を及ぼす―というのが大まかな流れなのですが、「いつ?」「どの現象が?」「どの程度?」「どんな影響を?」を見ていかないといけない。これが実に骨が折れる。
70年分見ようと思っていたけど、今月末の研究発表会には間に合わなそうなので、とりあえず、直近の「太陽活動周期」の分だけ見てみようっと。というわけで、今回のコラムのテーマにある「太陽活動周期」というワードが出てきました。
人類活動活発化(温暖化)VS 太陽活動低下(寒冷化)
太陽の表面では「太陽フレア」と呼ばれる大爆発がしばしば起きていますが、起きるときはしょっちゅう起きて、起きないときは全然起きません。
今年2018年は、太陽活動は静穏な時期「極小期」です。最近のピークは2012年でした。11年ぐらいの周期で太陽活動のピークを迎えます。1755年から1766年が第1太陽活動周期と定義されており、今は、2008年から始まった第24太陽活動周期の末期です。間もなく、新たな太陽活動周期が宣言されるのではないかと思います。
第24周期を振り返ると、活動が弱かったです。最近50年の太陽活動を見ると、ピーク時の活動度が徐々に下がってきています。次の活動周期はどうか、予想は割れています。このまま太陽活動は停滞するのか、また復活するのか。
かつて、数10年にわたり太陽活動が停滞した時代がありました。活動が弱まると、太陽系外から侵入する宇宙線が増えます。この宇宙線の作用で雲ができやすくなり、全地球規模で寒冷化するという説があります。今後どうなるのか、注視が必要です。
「人類活動による地球温暖化」VS「太陽活動低下による地球寒冷化」が、事態を複雑化させています。そんなことより研究の遅延がヤバイですわ。毎日早起きしているのになあ。(宇宙天気防災研究者)