【コラム・浅井和幸】きっかけではなく日々の積み重ねが大切だと、日々、人に伝え続けているところです。どのようにしたら伝わるかも考え続けているところですが、先日、浮かんだ例え話が次のものです。

「きっかけを教えて欲しい」という質問は、山の頂上から朝日を見たいので、最後の一歩の足の出し方を教えて欲しいという質問と同じです。最後の一歩さえ分かれば頂上に登れるのだから、朝日も見られるという考え方です。

最後の一歩は、右足だろうが、左足だろうが、スキップだろうが、その人が進みたい方法を使えばよいのです。ですが、最後の一歩を最後の一歩と出来るのは、頂上一歩手前にたどり着いている必要があるのです。

一歩手前までたどり着くために、単純な練習かもしれないし、笑顔でのあいさつかもしれないし、仲良くなるための日常会話かもしれない、何かを少しずつ行動することが大切です。

けんかをしたいわけじゃないのに、しかめ面したり、どうせ上手くいかないと決めつけて行動していないでしょうか。日々の何気ない悪いことや不安なことへの気持ちが、むしろ、悪いことや不安なことへつながる言動になっていないか顧みることが大切です。

嫌なことばかり起こると感じる方は、自分自身が嫌なことが起こるように動いているかもしれません。

「~するしかない」は間違い

あるお母さんから、相談がありました。いつも子どもが暴力をふるってきます。どうすればよいでしょうか? 優しくした方がよいですか? 話を聞くしかないのでしょうか? 逃げるしかないのでしょうか?

方法は無限にあるので、「~するしかない」ということは間違いです。いつも暴力をふるってくるということですが、それは全く脈絡なくと感じるでしょうが、何かのやり取りや心の動きがあります。

上の質問は、カウンセリングを受けたりして、優しくしましょう、話を聞いて共感しましょう、対処できなければ逃げてくださいという、アドバイスを受けたのでしょう。

しかし、お子さんがどのような状況の時に、お母さんがどのように声掛けをしたら、お子さんはどのようになったかを質問しても、そのやり取りを覚えていない人が結構な確率でいます。

それは、私の作る料理がおいしくありません。塩を入れるしかないでしょうか?だしを丁寧にとるしかないのでしょうか?という質問に似ています。現状の味がしょっぱいのか、薄いのか、コクがあるのか、分からないと、どのような調味料を加えてよいか分からないのです。

どのような状況の時に、どのように働きかけたら、どのようになったかという現状、事実が分からないと、どのように対処を変化させればよいか分からないのです。

支援者の中にも、全てに通ずるよい方法があると勘違いしている人がいます。しかしそれは、塩を増やせば料理がおいしくなる、唐辛子を増やせば全ての人が素晴らしいと感じる味になると言っているのと同じぐらいの勘違いなのです。(精神保健福祉士)