【コラム・斉藤裕之】浪人時代、府中免許センターに赴くこと5回。通称「一発」、教習所に行かずに、中型バイクの免許を取りました。何度目かの大学受験は、バイクの荷台に油絵の具を積んで、青梅街道経由で上野に行き実技試験を受けました。入学後、荷台に乗っていたのは今のかみさん。
今は、郵便屋さんのようなホンダの赤いカブ(110㏄)が1台あります。使用頻度は低いのですが、ガソリンが値上がりした時や震災直後は役立ちました。
寒い時期は乗らないので、毎年ゴールデンウィークのころに、汗だくになってキックを繰り返しエンジンをかけます。若いころは故郷山口までバイクで帰ったりしていましたので、私にとってバイクはちょっとした冒険的乗り物。
ですが、この小さなバイクは専ら街乗り用。しかし、真夏の強烈な日差しを浴びると、この非力なバイクなりの冒険に出かけたくなるのです。毎年お決まりのコース。牛久を出て筑波山を右に見て真壁へ。そこから八郷に抜けてフラワーパークで弁当。直売所で野菜を買って土浦経由のコース。
暑い時は暑い所へ
今年もいざ出発。じりじりと照りつける太陽。夏空にそびえる筑波山。小さなせせらぎと木陰の山道。土浦のハスの花もきれいです。
先日、生徒に相談されました。「先生、このところだるくてやる気でない」「そういう時は短期目標を立てる。それからだるいときほど動く。そして声を出す」なんて、テキトーに答えておいたのですが、このクソ暑い日にこそ単車で出かけるというのは、私にとってもまさにそういうことなのかもしれません。
暑い時は暑い所へ。とりあえず無理しない距離を非力なカブで冒険。走行中は大声で歌いながら。
異常ともいえる今年の夏。原因はいろいろあるのでしょうが、人が汗水たらさないようになったのに比例して、地球は熱くなってきたような気がします。どこかを冷やせばどこかが熱くなる。人を冷ませば何かが温まる。エネルギー保存の法則は人にも当てはまるでしょう。
さて、偶然にもツーリングの翌日、新聞に「スーパーカブ発売60周年記念モデル発売」という記事を見つけました。50㏄と110㏄の赤いモデルだそうです。さて自分では冒険心を持って、意気揚々と走っているつもりでも、はたから見たらじいさんが冷や水浴びているように見えているのかもしれません。私も発売60年に近づいておりますので。(画家)