【コラム・及川ひろみ】竹林が広がり、雑木林、杉などの植林地を飲み込むように広がる光景を見たことありませんか。成田発の飛行機から見える房総の山々、東海道新幹線の車窓から見える丘陵地などで、すさまじい勢いで広がる竹林が見られます。今や、竹林の拡大は、特に西日本では大きな問題になっています。しかし、有効な手立てが見つからないのが現状です。

宍塚の里山でも、竹林拡大は大きな問題です。この課題に真正面から取り組む中学生たちがいます。きっかけは、小学校のころから宍塚の会の活動に参加していたS君。土浦第四中学に入学すると、仲間たちも宍塚に連れて来たいとの思いが募ったようで、先生に里山活動を働き掛けました。

これに応えて、学校も総合の時間に自然活動を取り入れ、2年生200人余りが里山の竹林・池・荒れ地の開墾などを行い、成果を挙げました。一方S君は、当時休部状態であった科学部の活動にも力を入れ、その舞台に選んだのが宍塚の竹林でした。

初年度の研究テーマは「竹林の林床にはなぜ植物が生えないのか」でした。日ごろから竹がうっそうと茂る竹林は暗く、他の植物が極めて少ないことなど、雑木林との違いに気づいたようです。科学部の生徒たちは毎月宍塚にやって来て、竹林と雑木林の違いを観察。竹林の林床には枯れた竹の葉が白く積り、雑木林とは全く異なることに気が付きました。

続く土浦四中生の活動

竹林と雑木林の違いを、それぞれの植生、光量を調べると同時に、プランターを持ち込み、竹林の土壌と雑木林の土壌で、植物によって育ちに違いがあることなどを観察しました。さらに、竹と雑木の根の違いを比較するなど、中学生らしい発想で研究が続きました。研究は今年で10年目を迎えます。

現在のテーマは「里山の驚異、竹林の拡大の謎を解く」です。この研究は、初年度中学生科学研究土浦市長賞、霞ケ浦環境科学センター長賞を受賞。その後、県南金賞、昨年は県優秀賞も受賞しています。

この活動の素晴らしいことは、顧問の先生の取り組みです。生徒たちが疑問に感じたことを研究に生かすことは当然ですが、それだけでなく、保全活動・お楽しみ会などを組み合わせ、活動していることです。生徒たちが竹を伐採(場所によってはマダケ林をすっかり伐採)、20数年前の環境を取り戻したところすらあります。

孟宗竹を割り、節と節の間に生米と水を入れ、下からあぶってご飯を炊く、飯盒(はんごう)炊飯竹バージョン。竹を芯にしたバームクーヘン作り。竹のシーソー。時には、本格的な竹細工指導を受けたりして、竹をテーマに様々な活動へと発展させています。また、生徒が木登りやターザンごっこなどを始めると、顧問の先生は優しい眼差しで見つめています。(宍塚の自然と歴史の会代表)