月曜日, 10月 27, 2025
ホームつくば「障害があっても住みやすい地域を」根本希美子さん【鬼怒川水害から10年】㊦

「障害があっても住みやすい地域を」根本希美子さん【鬼怒川水害から10年】㊦

電気が止まったとき、命を落としかねない子どもたちがいる―。

つくば市を拠点に、人工呼吸器の使用やたん吸引、経管栄養など「医療的ケア」を必要とする子どもや保護者を支える親の会「かけはしねっと」の代表理事 根本希美子さん(47)はそう訴える。根本さんの長男・侑弥さん(19)も、専用機器を用いたたんの吸引や人工呼吸器の使用などが命をつなぐために欠かせない。活動のきっかけは、2015年9月10日、隣接の常総市を襲った鬼怒川水害で抱いた危機感だった。来年、団体は発足10年を迎える。「障害があってもなくても住みやすい地域をつくりたい」との思いを胸に、仲間たちと社会へ声を届け続けている。

当事者として伝えなければ

その日、つくば市の自宅にいた根本さんは、テレビから流れる「常総市付近で鬼怒川が氾濫するかもしれない」というニュースにくぎ付けになっていた。台風が秋雨前線を刺激し、鬼怒川流域で記録的な豪雨が降っていた。

常総市には、医療的ケアを必要とする子を持つ知人が住んでいた。長男より2、3歳年下で、幼い頃から誕生日などの節目の時に近況を聞き合う間柄だった。気になり連絡を取ると「避難先の確保が難しい」という。知人は、かかりつけの病院に問い合わせるも、災害の最中で治療の対応はできるが、避難の対応はできないと言われたという。避難所では機器を使うための必要な電源が十分に確保できない場合がある。「それじゃ、水害の心配のないうちに来ない?」根本さんが呼び掛け、つくばの自宅に避難してもらうことにした。知人はその日のうちに、自家用車に呼吸器、吸引機、それに付随する電源などたくさんの機器を積み込み到着した。

「鬼怒川が決壊した」というニュースが流れたのは、翌日10日の午後1時前。瞬く間に被害は拡大した。次々に家屋が水に飲み込まれ、取り残された人々の様子も映し出される。根本さん宅では子供のケアをしながら、テレビにかじりつくようにの推移を見守っていた。常総市内の約3分の1が浸水。5000棟以上の家屋が全半壊し、取り残された4000人以上がヘリコプターやボートで救助されることになる。

ただ幸いなことに、知人の自宅は水害のあった地域の対岸にあり被害を免れていた。10日のうちに帰宅する知人一家を見送りながら、紙一重だった状況に根本さんは「個人でできることには限界がある。大変な時こそ、日常的につながる人との関係が大切になる」と痛感した。

長男・侑弥さん(19)も、命をつなぐために電気が欠かせない。「当時はまだ、『医療的ケア児』という言葉すら知られておらず、問題も社会に認知されていなかった。自分たちが何に困り、何を必要としているのか、当事者として伝えていかなければと思った」と振り返る。

思いを共にする医療的ケア児の母親らと「かけはしねっと」を立ち上げたのは、翌年の2016年だった。

2018年には、台風による夜間の大規模停電を経験。復旧までの10時間、侑弥さんの命をつなぐ人工呼吸器と酸素濃縮器はバッテリーで稼働を続けた。暗い部屋に響く残量警告のアラーム音に不安が募った。後日、発電機を自費で購入したが、公的支援の必要を感じた。非常時の家庭用発電機購入の助成をつくば市に請願し、上限10万円の助成制度が19年に実現した。さらに21年には、医療的ケア児の家族の体験をまとめた冊子を仲間たちと制作した。当事者を支えるネットワークづくりと課題の理解を広げるために奔走している。

侑弥さんのたんなど口腔内の吸引をする根本さん。侑弥さんの喉元の気管切開部には人工呼吸器がつながっている(根本さん提供)

つながりを育む

かけはしねっとでは、情報発信に加え、子どもや家族同士の交流イベントの開催、SNSなどを通じた相談支援に取り組んでいる。活動で大切にするのは、楽しく、気軽に参加できる雰囲気づくりだ。根本さんは「障害のある子どもの体調によっては毎回参加できないこともある。毎回参加しなくてもいいし、直前にキャンセルしてもいい。心理的なことも含めて、できるだけ家族の方たちの負担がないようにしたい」と話す。

その思いの背景には、根本さん自身の経験がある。

つくば市出身の根本さんは、2006年に長男の侑弥さんを出産。産後間もなく心肺停止に陥り、脳に酸素が送られず無酸素性脳損傷による障害を負った。明日の命もわからない状況で発熱を繰り返し、口にしたものをすぐ吐いてしまう。その後も入退院を繰り返した。

「『私がこの子の命を背負っている、完璧にやらなきゃ』と必死だった。人とのつながりもなく、いっぱいいっぱいの毎日だった」と振り返る。そんな時、子どもの様子を見るため訪れた保健師の言葉に救われた。

「話を聞いてくれる中で、『お母さんすごい』『頑張ってる』と言ってもらえたことで、自分を認めてもらえた気がした。『私は間違ってなかった。これでいいんだ』と思えた。それから少し息が抜ける感じがし、なんとかやってこられた気がします」

子どものケアを担う母親は、家族以外と関わる機会が限られ、孤独になりやすいという。だからこそ「思いを吐き出せる相手が必要」だと強調する。

「私の場合は保健師さんだったが、誰でもいい。ママ友でもいいし、福祉・医療の人でもいい。障害の有無にかかわらず、誰かとつながり思いを吐き出すことで違う方向に気持ちを変えていけるのでは」

かけはしねっとによるイベント「まち歩きの会」の様子(根本さん提供)

かけはしねっとでは、公式のメッセージアプリに加え、メールやSNSなど複数の手段を活用し、異なる環境にあっても声を掛け合える体制を整えている。

「家族の中だけでは発散できない思いもある。どこかで吐き出せる存在が必要。支援を使いながら自分を大切にしてほしい。日常的な関わりやつながりが緊急時に生きてくる。災害のためだけに連絡ツールを作るのは大変だが、普段からやり取りを重ねていれば、いざという時に電話が使えなくても、メールやLINEで連絡を取れる。だから複数の手段を持つのは大切だと思っている」

「障害があってもなくても暮らしやすい地域になってほしいし、いつか社会の中に理解が広がり、わたしたちのような活動をしなくてもいい社会になれば、それが一番だと思っています」(柴田大輔)

終わり

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

13 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

13 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

「自然共生サイト」に認定されました《宍塚の里山》129

【コラム・森本信生】この9月、環境省、農林水産省、国土交通省から、土浦市の「宍塚の里山」、つくば市の「奥村組技術研究所ビオトープ」と「洞峰公園とその近隣公園」が自然共生サイトに認定され、30日に東京で認定式が行われました。 自然共生サイトは、国内だけでなく国際的にも位置づけられる制度です。2021年のG7サミットで採択された国際目標「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」では、30年までに世界の陸域・海域の30%を「健全な生態系として効果的に保全・管理された区域」とすることが掲げられています。 この目標を達成するため、国は23年度に「自然共生サイト」認定制度を創設し、25年度には「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律」を施行しました。今回の認定は、この法律に基づく初の認定です。自然共生サイトは、既存の保護区を除き、OECM(Other Effective area-based Conservation Measures:保護地域以外で生物多様性保全に資する区域)として、国際データベースに登録されます。 これまでに認定された自然共生サイトは、茨城県内で14カ所。土浦市では宍塚の里山が唯一の認定地です。つくば市は7カ所と多く、全国の市町村の中で第4位となっています。 環境教育の場として高い評価 今後、私たちの会は「自然共生サイト増進活動実施計画」に基づき、「生き物と歴史遺産に恵まれた宍塚の里山を次世代に伝える保全活動実施計画」を立て、次世代に向けた保全を目指します。認定にあたり評価された生物多様性上の価値は、次の4点です。 (1)公的機関によって生物多様性保全上の重要性がすでに認められている場(2)里地里山といった二次的自然環境に特徴的な生態系が存在(3)伝統工芸や伝統行事など、地域の伝統文化を支える自然資源の供給の場(4)希少な動植物が生息・生育している、またはその可能性が高いこと 有識者による認定審査委員会からは「本サイトが学生などの活動拠点となり、環境教育の場として活用されている点を高く評価する」とのコメントが寄せられました。 宍塚の里山はすでに、環境省の「生物多様性上重要な里地里山」に指定されています。また、100年間にわたり全国1000か所の自然環境をモニタリングする環境省のプロジェクト「モニタリング1000」における第1号調査地「里山コアサイト」としても知られており、日本を代表する貴重な里山の一つです。 今回の「自然共生サイト」認定は、この地域の価値が国際的にも認められたことを意味します。宍塚から吉瀬(つくば市)に広がる里山の保全活動が、さらに大きな力を得て進展することを期待しています。(宍塚の自然と歴史の会 理事長)

わんわんランドで愛犬と学園祭 つくば国際ペット専門学校

つくば国際ペット専門学校(つくば市沼田)が25日、隣接する犬のテーマパーク「つくばわんわんランド」を1日貸し切りにして、学園祭「第16回犬友祭(けんゆうさい)」を開催した。犬の訓練士や美容師、動物看護師などを目指す学生たちがさまざまな企画を用意し、日頃の勉強の成果を披露した。 混雑するのを避けるため今年も卒業生や家族などを含めた関係者だけでの開催となった。午後からはあいにくの雨になったが、2000人ほどが参加し、駐車場は満杯となった。 ドッグトリマーコース2年生は、来園者が連れてきた愛犬と一緒に写真撮影をしたり、愛犬に似合うリボンの色を選んでオリジナルアクセサリーを作るなどした。愛玩動物看護師コース2年生は、犬や猫の生態などに関する謎解きゲームを実施した。制限時間内にクリアすると脱出出来るという試みだ。ペットケア総合コース2年生は、犬猫や学校をテーマにクロスワードパズルとビンゴを組み合わせたゲーム「クロスワードビンゴリー」を実施。犬3頭の合計体重を当てるゲームなども催された。 フィナレーレを飾ったのは、ドッグトレーナーコース2年生によるドッグ・パフォーマンスショー。同校では、学生が1人1頭の子犬を飼育し、学校での授業を始め、放課後や学生寮、自宅で一緒に生活するパートナードッグ制度を実施している。学園祭では、それぞれのパートナードッグと1年半向き合った成果を、大勢の家族や関係者の前で披露した。学生が「待て」「お預け」「進め」などの指示を出すと、パートナードッグはそれぞれ、指示を出した学生の周りを回ったり、ダンスや曲芸を見せたり、投げたディスクを空中でキャッチしたり、ステージ上に設けたトンネルなどの障害物を駆け抜けたりしていた。 栃木県壬生町から来た玉田豊さん(76)は「孫がドッグトレーナーコースの2年生で、今日のショーに出演するので見に来た。あいにくの雨だけど頑張ってほしい」などと話していた。(榎田智司)

入替戦 第1戦は敗れる つくばFCレディース なでしこ2部復帰目指し

2025プレナスなでしこリーグ2部入替戦の第1戦が25日、つくば市山木のセキショウ・チャレンジスタジアムで行われ、つくばFCレディースは、なでしこリーグ2部11位の南葛SCウイングス(WINGS、東京都葛飾区)に5ー0で敗れた。つくばは昨シーズン、なでしこリーグ2部から降格し今シーズンでの復帰を目指す。入替戦はホームアンドアウェーで2試合が行われ、2試合の合計得点で勝負が決まる。第2戦は11月2日にアウェーのAGFフィールド(東京都調布市)で行われる。つくばは次のアウェーで6点以上の差を付けて勝てば逆転で2部昇格が決まるが、5点差なら同点となり、勝っても4点差ならば、南葛のなでしこ2部残留が決まり、厳しい戦いとなる。 つくばFCレディース 0 ー 5 南葛SC WINGS   0 前半 1        0 後半 4 【得点】前半=5分 南葛・菅野永遠、後半=33分 南葛・石倉花純、42分 南葛・佐藤幸恵、43分 南葛・石倉花純、90+2分 南葛・佐藤幸恵 つくばFCレディースは前半5分、南葛の菅野永遠から右コーナーキックを直接決められ、失点する。つくばも4分後、石黒璃乙が中央からドリブルで突破してシュートを放つが得点ならず。石黒は高校卒業後の今季から新加入しチーム最多得点を挙げている。 31分には、ケガで出場できない高橋萌々香に代わってキャプテンを務めた鏡玲菜が、中央から左足でミドルシュートを放ちゴールを捉えるが、相手キーパーに弾かれた。39分には再び鏡がフリーキックを直接狙ったが、わずかにゴールをとらえることができず、得点を奪うことは出来なかった。鏡は「相手のサイドが上がってきているところにロングボールを入れた。あの位置からのシュートは得意なので常にゴールを狙っていていたが悔しい」と残念がった。 前半は0ー1とリードされて折り返した。志賀みう監督は「やるべきことは徹底してやったが1失点はもったい失点だった」と前半を振り返った。後半は「もう一度やるべきことを徹底出来るよう確認し、相手が狙ってくる部分や自分たちの狙いを確認して選手に指示をした」。 後半は開始直後、南葛の細かなパス回しでゴールに迫られるが、つくばはデフリンピック日本代表のGK伊東美和を中心にDF陣が必死で守る。すると徐々に流れをつかみ、後半14分に石黒がシュートを放つ。GKが弾いたところを穂谷颯季がシュートを放つが、惜しくもゴール右に外れる。31分にも中央からパスを受けた石黒がドリブルで持ち込みシュートを放つが、またしても相手GK米満布貴に弾かれた。 一方南葛は、後半34分に途中出場の石倉花純がゴールを決め2点目を挙げると、後半42分には同じく途中出場の南葛、佐藤幸恵が決定的となる3点目を奪う。ホームで意地を見せたいつくばも、両サイドの攻撃から果敢にゴールを狙うが、その後は運動量が落ちて足が止まってきたところを押し込まれて、さらに2点を追加され5ー0で敗れた。 鏡は「自分たちのサッカーは(戦術として)体力を使うので、体力面だったり改善するところはたくさんある。あと1週間で準備していきたい。次の試合はアウェーで厳しい戦いになるが、相手の嫌がることをたくさんやって、5点、6点取って勝ちたい」とリベンジへの意欲を語った。石黒は「自分たちへの流れはあったが、そこで自分が決められなかったのが悔しい。リーグ戦の後半からは入替戦に向けて調整してきたので、力を発揮出来るようにしてきたが、もっとやれたなって思いが強い。得点力、シュートの回数も上げるべきで、最後まで動き続けるのが大事だと思った。あと1週間で足りない部分を補えるようにしっかり準備していき、絶対に昇格出来るように勝ちにいく」と話した。  今季キャプテンを務めた高橋萌々香は、試合後サポーターに向けて「まだ後半戦があるので、切り替えて、次は勝てるようにまだまだ諦めずに戦う」と誓った。志賀みう監督は「正直悔しい。選手は、伝えたこと、これまで積み上げてきたものをしっかり発揮してくれた」と選手を称え「自分(監督)自身が足りないから結果を出せなかった。本当に悔しい」と涙を浮かべながらも「まだ終わっていない。次は5ー0以上で勝ちに行く。皆さんも諦めずに一緒に戦って下さい」とサポーターに後押しを頼んだ。 今季、関東女子サッカーリーグ1部のつくばは、9月に福島県のJヴィレッジで行われたなでしこリーグ2部の入替戦予選を3勝1敗の2位で終え、入替戦の権利を得ていた。入替戦は、一つの上のカテゴリーであるなでしこリーグ2部の下位2チームと、予選会1位と2位のチームが戦う。予選会2位のつくばは、なでしこリーグ2部12チーム中11位の南葛と対戦し、予選会1位のレノファ山口FCレディースは、なでしこ2部最下位のFC今治レディースとホームアンドアウェーで2試合行う。合計得点で勝ったチームが来シーズンのなでしこリーグ2部に昇格または残留する。25日行われたレノファ山口FCレディースとFC今治レディースの第1戦は0-0の引き分けだった。(高橋浩一)

「外国人差別に反対」国道沿いで抗議行動 常総市議ら呼び掛け

「デマを信じて差別に加担しないで」ー。 外国人への差別や偏見に反対する抗議行動が25日、常総市で行われた。市内外から集まった参加者が、国道沿いでメッセージボードを掲げて「差別をなくそう」と訴えた。同市議の入江赳史さん(36)が呼び掛けた。入江さんは「夏の参院選で候補者が『外国人が増えて治安が悪くなる』と事実に基づかない主張をした。非常に許しがたい発言だし危機感を覚えた」と動機を語る。 12%が外国籍住民 午後4時前、常総市内を走る国道294号線沿いに10人余りが集まり、それぞれが手にするボードには「人間にファーストもセカンドもない」「あらゆる差別に反対」などの言葉が並んだ。 入江さんは6月から街頭で差別反対を訴えてきた。今回、初めて他の人にも行動を呼び掛けた。SNSで発信したところ市内外から反応があり、参加者の都合を踏まえて前日の24日にも市内で活動を行った。 常総市は県内で最も人口に対する外国人住民の比率が高い。昨年12月末現在、約6万人の人口のうち、約12.2%にあたる7153人が外国籍の住民だ。人数は、つくば市(外国籍1万4275人、人口比5.5%)に次いで県内2位で、ブラジル、フィリピン、ベトナムをはじめ、スリランカ、インドネシア、中国など50カ国余りの出身者が暮らしている。 「国際結婚をする方もいる。友人や職場などで日常的に外国人と関わる市民が多い地域だからこそ、事実に基づかないデマが広がるのは危険だ。差別を受けやすい外国人が事故を起こしたなどだけでも注目されてしまう。市民としてこのまちで声を上げる必要があると思った」と入江さんは話す。 差別はどこでも起きうる この日の行動には、東京から駆けつけた金正則さん(71)の姿もあった。在日コリアンの金さんは「選挙に出て世の中を変えたい」と68歳で日本国籍を取得し、6月の都議選に出馬した経験を持つ。選挙期間中、出自を元にした誹謗中傷を受けた。 「差別に反対する人は多いが、声に出して表現する人は少ない。『どっちもどっち』という中立の姿勢は差別への加担と同じこと。市民が『差別はダメ』だと明確に伝え、地域を超えて連帯することが大切だ」と訴えた。 常総市議の堀越道夫さん(74)は「市内ではごみの出し方など、日常の中で感じる外国人住民への不満などは確かにある。今の時代はそうした印象が過度にあおられてしまっている。市民として、なんとかしなければいけない」と語った。 入江さんは「選挙のたびにデマが拡散され、差別の被害を受ける人がいる。これは常総市だけでなく、どこでも起きうる全国的な問題。ネット上のデマを信じて差別に加担するのを止めてほしい」と訴え、「街頭活動をしていると『日本人を差別するのか』と言われることがある。しかし人権に国籍は関係ない。これからも外国籍の方々とこのまちでも共に暮らしていけるよう、差別に抗い続けたい」と語った。(柴田大輔)