新型コロナの感染が拡大した2020年、登校や部活動を厳しく制限された中高生たちが天体観測の競技を通じて交流する青春映画「この夏の星を見る」が7月から全国公開される。県立土浦三高発のストーリーだ。公開を前に22日、作品の舞台になった土浦市内の劇場で完成披露試写会が開かれた。
7月4日公開「この夏の星を見る」
直木賞作家・辻村深月さんによる同名小説(角川文庫/KADOKAWA刊)の映画化。辻村さんが土浦三高(土浦市大岩田)を訪れて取材した「スターキャッチコンテスト」を軸に展開する。手作りの望遠鏡で星を捉えるスピードを競うコンテストは、同高の科学部顧問、岡村典夫教諭の発案で2015年から県内の高校を中心に行われている。コロナ禍を背景にした小説では、舞台を東京・渋谷や長崎・五島の中学校に広げてのオンライン競技として構成され、映画もほぼ原作をなぞる青春群像劇となる。
監督・山元環、脚本・森野マッシュによるドラマ化。同高をモデルにした茨城県立砂浦高校の天文部に所属する2年生・溪本亜紗役で桜田ひよりさんが主演を務め、亜紗の同級生役で水沢林太郎さん、天文部長役で河村花さんらが共演した。撮影は校門の桜並木が満開となった同高や天体観測の名所であるプラトーさとみ(常陸太田市)など、県内各所でも行われた。
配給・東映で劇場公開は7月4日から。22日には上映館のひとつ、シネマサンシャインのあるイオンモール土浦(土浦市上高津)で完成披露の試写会が行われ、同高の岡村教諭や教職員と生徒、安藤真理子市長ら同市関係者らが鑑賞した。
現地撮影のリアル
上演後、出演者の水沢林太郎さん、河村花さんが舞台挨拶し、「モデルになった学校で撮影できるっていうのは一番(演技の)ヒントになるので助かった。実際に自分たちで望遠鏡も作ったのも楽しかった」と水沢さん。
砂浦高の天文部部室として、土浦三高科学部が使う教室で撮影が行われ、演劇部の生徒らがエキストラ出演した。科学部の3年生、浜村聖空(せいら)さんは「先輩たちのやってきたことがこんな作品になってとても誇らしい。映画で大事なアイテムになっていた部活ノート、私のつけていたノートを参考にしてもらえたのでうれしかった」と喜んだ。
撮影時演劇部部長を務めていたという3年生の阿部凪空(なぎさ)さんは「画面では、あ、かばんが映ったという感じだったけど、ロケに立ち会えて沢山学ばせてもらい、貴重な経験をさせてもらえた」と語る。
衣装、小道具など展示

映画に関わったいばらきフィルムコミッション、土浦フィルムコミッションは共催で、7月31日まで同モール3階未来屋書店・ヴィレッジバンガード前ブリッジで公開記念展イン土浦「この夏、映画の舞台へ」を開催中。ロケ地のパネル展や劇中に登場するスターキャッチ用天体望遠鏡や衣装、小道具などが展示されている。
つくば市では7月4日からMOVIXつくば(つくば市研究学園・イーアスつくば内)で公開される。
土浦三高では29日、県内各高校に呼び掛けて、塩ビ管を切り出して作る屈折型望遠鏡の製作講習を開催。映画のPRに一役買う。(相澤冬樹)