仮想空間と現実空間の触覚の認知を研究
日本国際学園大学(つくば市吾妻)経営情報学部メディアデザインコース4年の犬嶋美雨さん(22)がこのほど「拡張体験デザイン協会」(会長・持丸正明 産業技術総合研究所人間拡張研究センター長)による2025年のグッド体験デザイン学生賞(Good Experience Design Student Award)を受賞した。犬嶋さんの卒業研究だったバーチャル空間での体の感覚の研究で、これまできちんとデータをとった実験が無かったことから、高く評価された。
メタバースなど仮想空間の中に入り込んだ感覚になる、ゴーグルのようなヘッドマウントディスプレイという装置を頭に装着して実験した。仮想空間の中と現実空間とで同時に、手で触った対象物表面のでこぼこの感触が異なる場合、脳が自分の体をどう認識するかを研究した。何度も繰り返して、異なる触覚の対象物を手で触ると脳は、目で見える仮想空間の中にある手が触った触覚を、現実の自分の手の触覚と一致させようとして、仮想空間の方の映像でつくられた手を、自分が実際に感じた触覚だと認識してしまうようになることを具体的なデータで示した。

27日、同協会運営委員長の大山潤爾 産総研主任研究員が同大を訪れ、犬嶋さんに賞と盾を手渡した。2025年の学生賞の受賞者は全国で2人。同賞は2023年から授与しており犬嶋さんは7人目。
犬嶋さんは「まさか受賞できるとは思ってなかったので、ひじょうに光栄」と語る。卒業後は介護職として働く予定で「卒業研究で体の認知に関することを調べたので、就職後も高齢者の体に関する認知についての知見を深めるのに役立てていければ」と話していた。
東京大学名誉教授で同大の横澤一彦教授の指導を受けながら実験を重ね、日本心理学会注意と認知研究会でも発表した。
横澤教授は「日本国際学園大学に移ってから(犬嶋さんの学年が)初の卒業生になった。仮想空間の中の人間はどのような行動をするのか調べたいと思っていた。学会で発表し多くの質問が出て、新しい挑戦ができたと思う」と話した。
同協会の大山運営委員長は「バーチャル空間というと一般的に視覚と聴覚だが、これからは触覚や匂いなども加えた研究が進んでいく。視覚と触覚が同時にある体験について、ちゃんとデータをとって本当に効果があるかを調べることが大事。そういう研究を奨励したいということで選ばれた」などと述べ、「触覚がある方が体験がリアルになるといわれているが、どれくらいの精度でどれくらいの触覚を再現すれば、よりリアルで楽しい仮想空間になるかが分かるようになるのではないか」と話している。(鈴木宏子)