昨年7月水戸で結成
つくば市豊里の杜のギャラリー夢工房で23日、若手音楽家のユニットMuses du son(ミューズ デュ ソン)がマチネコンサート(昼公演)を開く。「春に舞う あたたかな風ときらめく音」と題し、春らしい軽やかで楽しいイメージの楽曲を多く披露するほか、言葉や香り、装いなどの要素を加え、空間までも表現の一つとしてデザインする。

ミューズ デュ ソンは水戸三高音楽科出身の2人によるユニットだ。フルートの荻美波さんは潮来市出身、高校卒業後パリ・エコール・ノルマル音楽院で学び帰国。現在は東京フィル主席フルート奏者の斎藤和志さんらに師事する傍ら、フリーランスの演奏家として活動中。能力を最大限に発揮する体の動かし方や重心位置などの身体理論「4スタンス理論」で知られるREASH(レッシュ)マスター級トレーナーの資格を持ち、同理論をフルートの指導にも取り入れている。鹿島高吹奏楽部の外部講師でもある。
ピアノの森田凪さんは笠間市出身、東京音大ピアノ演奏家コース卒業。第35回国際古楽コンクール審査員奨励賞受賞。水戸芸術館「第27回茨城の名手・名歌手たち」「プロムナード・コンサートEXTRA」などに出演。ソロや伴奏ピアニストとしての活動のほか、東京藝大別科で古楽器のフォルテピアノを学び、母校である水戸三高の非常勤講師も務める。
高校時代から互いに趣味や感性が似ていることは意識していて、「いつか一緒にやりたいね」と話してはいたが、当時はそれぞれの活動で忙しく、卒業後も年1回ほどの頻度で会う程度だった。昨年5月の再会を機に気持ちが再燃。「お互いに修業やコンクールへの挑戦などで苦しみ悩んでいた時期を抜け出して、演奏が楽しくなってきたところ。今なら一緒にできると思った」と森田さん。
昨年7月に水戸で結成記念ライブを行い、その後も都内のカフェやライブハウスなどで活動。「去年の公演はドビュッシー、武満徹、ピアソラなど自分たちのやりたいものばかりを詰め込み、クラシックになじみがない人には難しくなってしまった。今回のラインナップはサロン向けの小品などが中心で、初めての人にも楽しんでいただけると思う」と荻さん。

フルートとピアノというと主旋律と伴奏を連想しやすいが、この2人はそうではなく、互いに前に出たり背後に回ったりして支え合う関係。特に荻さんのフルートは、中低音で漂うような空気感を出したり、人の声や風の音を模したりといった特殊な奏法も駆使。さまざまな管楽器や打楽器も取り入れ、2人の手が届く範囲で色彩に富んだ音空間を作り上げる。

詩やイラストも手掛ける2人。今回演奏する曲の一つにはオリジナルのストーリーも付けた。「絵本を開くような気持ちで音楽の世界に入り込んでほしい」という言葉は、「空間ごとデザインする」このユニットの真骨頂といえそうだ。今後はイベント出演や子ども向けの企画なども含め、ジャンルの垣根を越えて幅広い音楽を届けたいという。(池田充雄)
◆Muses du sonマチネコンサート「春に舞う あたたかな風ときらめく音」は3月23日(日)、つくば市豊里の杜2-2-5、夢工房で開催。開場は午後1時30分、開演は2時。演目はセシル・シャミナード「コンチェルティーノ」、アンリ・ビュッセル「プレリュードとスケルツォ」、村松崇継「Earth」、小倉大志・組曲「星を掴みに出かけた音楽家たち」。入場料2000円。申し込み・問い合わせは電話029-852-7363(夢工房)。Muses du sonのインスタグラム、X(旧ツイッター)、LINEはこちら。