【コラム・奧井登美子】
「おめえら、赤か?」
「赤?…アカではありません。ピンクの人はいるかも知れませんが」
「赤のやつら、なんでも反対しやがる」
「市民運動の説明にあがったのですが…すみません」
「霞が浦の浄化なんて、偉そうなこと言いやがって…」
「失礼します」
1947年、医師の佐賀純一先生が「土浦の自然を守る会」を創立した。事務所は佐賀医院。主なメンバーは先生に誘われた医師会の人たち。土浦協同病院に勤務していた田谷利光先生は農薬にも詳しく、散布時の事故などについて発表してくださった。
土浦市内にある高校の教師たちも参加。植物の後藤直和先生のほか、動物、魚類などの専門性を生かして市民に教えてくださった。当時、土浦の水道水処理は未熟で、アオコの臭いがしたり、色が付いていたりして、市民の不安は大きかった。飲食店も困っていたらしく、飲食店組合の組合長もメンバーだった。
県会議員とは見解が違う
今考えると、市内のすごい人材をよくぞ集めてくださったと思う。毎週木曜日に佐賀医院に集まって、「霞が浦の水の浄化」についてものすごい議論をし、市民にも読んでもらえるように文書を残している。頭脳集団の方々は仕事が忙しいので、我々主婦がその文書を持って回り、一般市民、市会議員、県会議員の方々の反応を確かめる。
「おめえら、アカか?」といきなり聞かれて、「ああ、この人は蛇だ。まともな話はしない方がいい。私は蛇に巻かれたふりをして逃げるしかない」。そう判断する。
政治家の中には「政治屋さんゴッコ」をしている人もいることがわかった。「誰と誰にあいさつしたか?」と、県議の名前を挙げて確かめる人も多い。うっかり巻き込まれたら、時間がいくらあっても足りなくなってしまう。「県会議員さんとは、見解(けんかい)が違います」と言いたいところを、ガマン、ガマン。
「〇〇先生のところには、友達の✕✕が行っていると思いますので、私は失礼します」。蛇に巻かれたフリをして帰る。蛇さんと付き合うコツ(前回コラム)を知っていたおかげで、霞ケ浦水質浄化の運動を市民の間に定着できたと思う。(随筆家、薬剤師)