2015年9月の鬼怒川水害で、常総市の住民が甚大な被害に遭ったのは国交省の河川管理に落ち度があったためだなどとして、同市の住民ら20人が国に対して約2億2000万円の損害賠償を求める国家賠償訴訟の控訴審判決が26日、東京高裁で出された。中村也寸志裁判長は一審に続いて、国の河川管理の落ち度を一部認め、被害を受けた同市若宮戸地区の住民9人に対して約2850万円を賠償するよう命じた。
鬼怒川水害では豪雨により常総市内を流れる鬼怒川の堤防の決壊や越水があり、市内の約3分の1が浸水した。同市では災害関連死を含めて15人が亡くなり、住宅被害は全壊53軒、半壊5120軒、床上浸水193軒、床下浸水2508軒に及んだ。一審で水戸地裁は国に対し、原告住民32人のうち若宮戸地区の住民9人に約3900万円の損害賠償を支払うよう命じる判決を出した。原告住民と被告の国の双方が控訴していた。
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二審では、国の責任が一審で認められた若宮戸地区について住民側は、自然堤防の役目を果たしていた砂丘林を民間事業者が太陽光パネル設置を目的に採掘したことにより堤防の機能が失われたとし、国が同地域を「河川区域」に指定し、開発を制限すべきだったと主張していた。住民側の弁護団によると、一審から賠償額が約1000万円減額になった理由は「被害に遭った家財の認定金額が低くなったことと、写真など『思い出』の品物への慰謝料が認められなかったため」という。
一方、同市上三坂地区で越水し堤防が決壊したことによる被害については、一審に続き二審でも住民側の主張が退けられた。住民側は、同地区は堤防の高さが低く、他の地域に優先して改修すべきだったのに、国が対応を怠ったことが水害につながったなどと主張していた。控訴審で中村裁判長は「国の改修計画は不合理とは言えない」とし、住民の訴えを退けた。
一石投じるも、救済遅すぎる
原告団共同代表の片岡一美さん(71)は「1人でも勝てば勝訴だと思い『勝訴』の旗を出したが、一審より悪い結果となった今回の判決は、実質、敗訴だと感じている。水害は天災だと思っていたが、その要因を知ると国交省の河川管理責任による人災だと考えが変わった。国交省の考えを司法が追認したのは遺憾」だとし、上告の意思を表した。
住民側の只野靖弁護士は「水害から9年経ってようやくここまできた。救済という意味では遅すぎるが、水害訴訟では住民の訴えが認められない『冬の時代』が続いていた中で、一部でも国の瑕疵(かし)の責任が認められたことは画期的。日本中で水害が起きる中で、地方公共団体の責任が問われるものもあり、一石を投じる判決」と語った。(柴田大輔)