木曜日, 2月 27, 2025
ホーム暮らし二審も国の責任認める 鬼怒川水害訴訟 東京高裁で判決

二審も国の責任認める 鬼怒川水害訴訟 東京高裁で判決

2015年9月の鬼怒川水害で、常総市の住民が甚大な被害に遭ったのは国交省の河川管理に落ち度があったためだなどとして、同市の住民ら20人が国に対して約2億2000万円の損害賠償を求める国家賠償訴訟の控訴審判決が26日、東京高裁で出された。中村也寸志裁判長は一審に続いて、国の河川管理の落ち度を一部認め、被害を受けた同市若宮戸地区の住民9人に対して約2850万円を賠償するよう命じた。

鬼怒川水害では豪雨により常総市内を流れる鬼怒川の堤防の決壊や越水があり、市内の約3分の1が浸水した。同市では災害関連死を含めて15人が亡くなり、住宅被害は全壊53軒、半壊5120軒、床上浸水193軒、床下浸水2508軒に及んだ。一審で水戸地裁は国に対し、原告住民32人のうち若宮戸地区の住民9人に約3900万円の損害賠償を支払うよう命じる判決を出した。原告住民と被告の国の双方が控訴していた。

判決後、記者会見する原告団ら。左から、只野靖弁護士、原告住民の片倉一美さん、高橋敏明さん、鈴木憲夫さん

二審では、国の責任が一審で認められた若宮戸地区について住民側は、自然堤防の役目を果たしていた砂丘林を民間事業者が太陽光パネル設置を目的に採掘したことにより堤防の機能が失われたとし、国が同地域を「河川区域」に指定し、開発を制限すべきだったと主張していた。住民側の弁護団によると、一審から賠償額が約1000万円減額になった理由は「被害に遭った家財の認定金額が低くなったことと、写真など『思い出』の品物への慰謝料が認められなかったため」という。

一方、同市上三坂地区で越水し堤防が決壊したことによる被害については、一審に続き二審でも住民側の主張が退けられた。住民側は、同地区は堤防の高さが低く、他の地域に優先して改修すべきだったのに、国が対応を怠ったことが水害につながったなどと主張していた。控訴審で中村裁判長は「国の改修計画は不合理とは言えない」とし、住民の訴えを退けた。

一石投じるも、救済遅すぎる

原告団共同代表の片岡一美さん(71)は「1人でも勝てば勝訴だと思い『勝訴』の旗を出したが、一審より悪い結果となった今回の判決は、実質、敗訴だと感じている。水害は天災だと思っていたが、その要因を知ると国交省の河川管理責任による人災だと考えが変わった。国交省の考えを司法が追認したのは遺憾」だとし、上告の意思を表した。

住民側の只野靖弁護士は「水害から9年経ってようやくここまできた。救済という意味では遅すぎるが、水害訴訟では住民の訴えが認められない『冬の時代』が続いていた中で、一部でも国の瑕疵(かし)の責任が認められたことは画期的。日本中で水害が起きる中で、地方公共団体の責任が問われるものもあり、一石を投じる判決」と語った。(柴田大輔)

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事業効果ある TX 土浦と東京延伸一体整備目指す 県が事業計画素案

つくばエクスプレス(TX)の県内延伸を検討している県は25日、土浦駅延伸の事業計画素案を発表した。土浦駅延伸のみを単独で整備する場合と、東京駅延伸と一体で整備する場合の両方を計算した。需要拡大や費用削減の観点から県独自の調査に基づく予測モデルでシミュレーションを行った結果、土浦延伸を単独で整備する場合、1以上であれば事業効果があるとされる費用便益比(B/C)は1.60と事業効果があり、黒字に転換するのは43年とした。東京駅延伸と一体で整備する場合は、費用便益比1.35、黒字になるのは27年と、黒字化が早まる見込みだとした。 今後についてはさらに関係者と調整を進め、必要な追加調査を実施し素案の磨き上げを進めるとし、次の国交省交通政策審議会答申で東京駅延伸と一体的に土浦駅延伸の位置づけを目指すとしている。 土浦駅延伸については、現在のJR土浦駅に隣接して新土浦駅を設け、TXつくば駅―新土浦駅間(約10キロ)の駅は1駅、可能な限り最短経路と仮定して計算した。開業目標は東京駅延伸と同じ20年後の2045年、つくば駅ー新土浦駅間の所要時間は約9分、運賃340円、JR土浦駅とTX新土浦駅間の乗り換え時間は約4分、つくば駅発着の全列車が新土浦駅に乗り入れると想定し、概算事業費は約1320億円、両駅間の輸送人数は1日当たり約2万2000人から2万5000万人とした。 事業費は既存の補助制度である国の都市鉄道利便増進事業費補助を活用し、事業スキームは営業主体と整備主体が異なる上下分離方式の導入を想定、整備費は国、地方、借入が3分の1ずつとし、開業後は営業主体か受益相当額である施設使用料の支払いを受けると想定した。 一方、東京駅延伸と一体で整備を進める場合は、TX秋葉原駅-新東京駅間(約2キロ)の所要時間約3分、運賃170円、TX新東京駅とJR東京駅間の乗り換え時間は約8分、秋葉原駅発着の全列車が新東京駅に乗り入れるとし、概算事業費はつくば駅ー新土浦駅間と秋葉原駅ー新東京駅間の2区間合わせて約3070億円、1日当たりの輸送人数は、つくば駅ー新土浦駅間が約2万人から2万6000人、秋葉原駅-新東京駅間が約13万3000人とした。 一体整備の需要予測については、TXつくば駅-新土浦駅間の中間駅周辺の開発を含めて検討し、開発面積約160ヘクタール、計画人口約5000人の開発を想定したとした。 県は2023年6月に、JR土浦駅に延伸する構想の具体化に向けた検討を進めることを検討し、2024年度中に採算性確保に向けた方策の調査・検討を実施するとしていた(23年6月24日付)。検討に先立って23年3月、県の第三者委員会(委員長・岡本直久筑波大教授)が提言を出し、その際の土浦方面の延伸の想定は、事業費約1400億円、つくば駅―土浦駅間の1日当たりの乗車人数は約8600人、建設コストを除き年間3億円の赤字が出ると予測し、1以上が望ましいとされる費用便益比は0.6で、1を上回るためには11万人規模の沿線開発が必要だとしていた(23年3月31日付)。 「一歩前進」土浦市長 県の事業計画素案について土浦市の安藤真理子市長は25日「つくばエクスプレスの土浦延伸は、長年にわたる私たちの悲願であり、市民の皆様の利便性が格段と向上することはもちろんのこと、県のみならず、首都圏全体に大きなメリットをもたらす。その中で今回、茨城県が発表した事業計画素案は、土浦延伸の実現に向けて一歩前進したことを意味しており、非常にうれしい。東京延伸と一体的に進めることで、地域経済の発展への起爆剤になるものと考えており、県との連携を密にし、2045年の開業に向けて、全力で取り組んでまいりたい」とするコメントを発表した。

冬のかくれんぼ《短いおはなし》36

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