水曜日, 7月 2, 2025
ホーム土浦土浦 霞月楼所蔵の海軍予備学生 寄せ書き屏風に「全国で唯一残る貴重な資料」 

土浦 霞月楼所蔵の海軍予備学生 寄せ書き屏風に「全国で唯一残る貴重な資料」 

作家 高野史緒さんと学者 清水亮さんがトーク

土浦の老舗料亭「霞月楼所蔵品展」(9月24日付)最終日の29日、作家の高野史緒さんと社会学者の清水亮さんによるトークセッション(9月9日付)が、土浦駅前のアルカス土浦1階 市民ギャラリーで催された。太平洋戦争末期の1944年、特攻に向かう海軍予備学生が霞月楼で催された送別の宴で、勇ましい言葉や芸者の名前などを寄せ書きした霞月楼所蔵の屏風(びょうふ)について、清水さんは「死と隣り合わせの兵士のいろいろな思いが書き込まれており、出征前の遺書にも書かない、20代前後の若者の、赤裸々な等身大の姿だ。(旧日本軍の基地があった全国のまちを調査した中で)土浦に唯一残されている貴重な資料」だと話した。

トークセッションはいずれも昨年、土浦を題材に本を出した高野さんと清水さんの2人が、「ツェッペリン伯号と湖都・土浦を語る」をテーマに異なる視点から土浦について語った。高野さんは昨年7月、土浦を舞台としたSF小説「グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船」(ハヤカワ文庫)を出版、清水さんは昨年2月、海軍航空隊があった戦前から戦後の阿見と土浦の地域史を紐解いた「『軍都』を生きるー霞ケ浦の生活史1919-1968」(岩波書店)を出版した。

会場の様子

何となく懐かしい感じがする

高野さんは、小説を書く上で自分が生まれる前の話である飛行船ツェッペリン伯号について詳しく調べたと言い、1929年に阿見町に寄港したツェッペリン伯号に同乗した大阪毎日新聞記者の円地与四松(えんち・よしまつ)の貴重な著書「空の驚異ツェッペリン号」を持参し、「高度400メートルから800メートルの低空を飛行し。東京上空を飛んで横浜の上空で旋回し土浦まで1時間で戻ってきた。結構な速さだった」などと話した。

ツェッペリン伯号の船長だったエッケナーについて「ナチス嫌いで、世界一周の後、社会的地位を追われた。円地与四松が『乗組員に手のない人、足のない人がいる』と書いているが、エッケナーは第一次大戦の傷痍軍人を積極的に雇っていた。ツェッペリンの会社は平和の会社だった」などと語った。

「グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船」に土浦のまちの景色が詳細に描かれていることについては「土浦のことを書いている小説はほとんどないので、土浦を全国に見せてやろうという気持ちだった」と言い、土浦も茨城も訪れたことがない読者から「何となく懐かしい気がする」という感想が寄せられたと明かした。司会者からアニメ映画化が似合っているのではないかという質問が出て、高野さんが「今、口外できない」と答えると、会場から拍手が起こり、期待するムードが高まった。

明るさと暗さがある

一方、清水さんは、かつてツェッペリン伯号の工場と基地があり、現在は新型のツェッペリンNT号が観光飛行するドイツのフリードリヒスハーフェン市を昨年訪れたと語り、「ボーデン湖があり、霞ケ浦がある土浦と似ている。土浦市と友好都市になっていて、『9500キロ先は土浦』という看板もあった」と話した。

自身の研究テーマの基地と地域との関わりについては「明るさと暗さがある」とし、明るい面として「1920年代に霞ケ浦航空隊ができて、土浦は潤い、航空隊が空の港として土浦が世界とつながっていった」と話した。さらに会場から出た質問に答え、住民が基地に対してもつ印象がポジティブかネガティブかについて「基地が出来た時期が重要なポイントになった。大半は戦争末期に土地を強制収容してできたためネガティブだが、土浦は第一次大戦と第二次大戦の間の一息つく時期に造られた」などと話した。

「芋掘り」の一種

霞月楼専務の堀越雄二さんが、レプリカが会場に展示されている海軍予備学生の寄せ書き屏風について説明すると、清水さんは「屏風の寄せ書きは『芋掘り』の一種だった」と説明した。芋掘りは海軍の隠語で、料亭の二次会、三次会で兵士が乱暴を働くこと。堀越さんは「料亭の畳をひっぺ返し、畳を天井近くまで積み上げて、天井の板をぶち抜いて、天井裏をドタドタしたり、わざと芸者の着物に醤油をぶっかけて暴れることがあったが、次の日に(航空隊が)弁償金をたっぷり持ってきた」などと話した。

寄せ書き屏風について説明する霞月楼専務の堀越雄二専務

トークセッションの冒頭、安藤真理子土浦市長があいさつ。会場には100人を超える参加者が集まった。飛行船の歴史や文化史研究の第一人者でドイツ文学者の天沼春樹さんも登壇した。司会は霞月楼所蔵展実行委員会の坂本栄委員長が務めた。会場前のアルカス土浦の広場では「屋台村」が催され、もつ煮込みやスイーツ、ドリンクなどのほか、土浦ツェッペリンカレーが販売され、ツェッペリン伯号の紙芝居も上演された。

美浦村から参加した西山洋さん(68)は「清水さんとは連絡を取り合っていて、清水さんに高野さんの小説を勧められて読んだ。元々SFは読んでいないが、『グラーフ・ツェッペリンー』はとても面白く、難しい科学用語も気にならなかった。今日はとても良い催しだった」と述べた。

アルカス土浦前広場の「屋台村」で披露されたツェッペリンの紙芝居

➡動画「トークセッション ツェッペリン伯号と湖都・土浦を語る」

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

愚痴が問題解決を遠ざける《続・気軽にSOS》162

【コラム・浅井和幸】私が代表理事をしている一般社団法人「LANS」という居住支援組織があります。住宅確保要配慮者=ざっくり表現するとアパートを借りづらい人=を支援する法人です。暴力から避難してきた人、障害者、高齢者、生活困窮者、仕事が続けられず社員寮を出なければならない人、車上生活を止め部屋を探している人などをサポートします。 6月現在、茨城県内では11カ所の法人が県から指定されています。全国では800カ所を超えていると思います。LANSは県第1号指定法人で、7月から8期目を迎えます。自治体や福祉事業者、病院や警察、不動産屋などから依頼を受けたりして、居住支援をしています。現在では10名ほどの要員が支援に当たっています。 支援には必要な知識もあり、勉強しながら進めなければなりません。分からないことがあって当たり前ですし、その時にならないと分からないこともあります。その場合、何らかの支障が出て支援できなくなるので、そこでやっと知らないことを知ります。例えば、インターネットを使った住まいの検索方法、生活保護や障害福祉の手続きなどです。 支援に行き詰まれば(できればその前の行き詰まりそうと感じたとき)、浅井に報告や相談をしてほしいと伝えています。それでも、なかなか相談に来ることが少ないので、こちらから聞いてみて支障が見つかることも多々あります。支援員の皆さんは素直で、ちょっとしたことでも相談したいと考えてはいるようですが、なかなか相談に来ません。浅井が忙しいと思い遠慮しているのでしょうか? 皆で愚痴に共感し慰める どこで相談が止まっているのか、気づいた点がありました。それは、支援に何かしらの支障が出てきたとき、支援員同士で支援について愚痴を言い、それを共感の気持ちで受け止め、慰めることで話が止まっていることでした。例えば、法律的な問題とか、福祉のシステム的な問題とか、就労するための年齢的な問題とか、〇〇市には部屋の空きがないという不動産屋の話を鵜呑みにして…。 そこで気持ちがすっきりして、解決方法を考えることなく、支援に当たる。気持ちが楽になっているから支障への感受性が鈍くなる。今起きていることは仕方がないと思い、相談から遠ざかるという悪循環が起きていました。 LANSでは月1回、全体会議を開きます。そのとき、支援員に上記のことを挙げ、「愚痴を言って気持ちが楽になっているのではないか。愚痴が出たタイミングが、浅井やこの会議で報告するタイミングだ」と伝えました。一般の生活では愚痴を言うことも大切です。しかし、それで問題解決から遠ざかっているかも知れない―と考えてみるとよいですよ。(精神保健福祉士)

原因は下水道管の老朽化と硫化水素 土浦 道路陥没事故

土浦市西真鍋町で6月12日発生した道路陥没事故(6月14日付、17日付)で、同市は7月1日、陥没の原因は、埋設されていた下水道管の老朽化と、下水から発生した硫化水素の影響だと断定し発表した。硫化水素の影響で鉄筋コンクリート製の下水道管の腐食が早まって損傷し、管の上の部分の土砂が損傷箇所の下水道管に流入し、地中に空洞が生まれたためという。 市下水道課によると、損傷した下水管は6月28日に補修工事が完了した。一方、道路の通行止め解除がいつになるかは現時点で未定という。 硫化水素が発生し下水道管が損傷したことが原因の道路陥没事故は、今年1月、埼玉県八潮市でも発生し、トラックを運転していた74歳の男性が死亡している。 損傷した土浦市の下水道管は、44年前の1981年に敷設された。老朽化に加え、現場から約1.6キロ離れた塚田ポンプ場から圧力をかけて送水し、水がはきだされる下流だったことから硫化水素が発生しやすかったとみられている。 下水道管は直径60センチで、地面から4.4メートル下に埋設されている。道路は長さ3.9メートル、幅3.4メートル、深さ2.5メートルにわたって陥没し、約33立方メートルの土砂が流出した。 道路陥没箇所の下水道管は2カ所に損傷があり、修復工事では、損傷が大きかったマンホールに近い西側について下水道管を長さ1.5メートルにわたって交換した。東側は幅約40センチの損傷部分を修復した。 現在、土を埋め戻す作業中で、今後、路面にアスファルトを敷設する。さらに陥没箇所の安全や周辺の安全を確認した上で、通行止めを解除する予定という。 今後の対策については、市が定期的に実施している道路管理パトロールの際に、古いマンホールについてはふたを開け、目視で土砂などがたまっていないかを点検するとしている。

軽井沢高原文庫館長の大藤敏行さん《ふるほんや見聞記》6

【コラム・岡田富朗】大藤敏行さん(62)は埼玉県の出身。筑波大学を卒業後、1985年、長野県軽井沢町に開館した軽井沢高原文庫の学芸員に着任しました。同文庫は、作家の中村真一郎さんを中心に、堀多恵子さん(堀辰雄夫人)、室生朝子さん(室生犀星長女)、『新潮』元編集長の谷田昌平さんらに力添えを得て、初代館長に大妻女子大学教授だった池内輝雄さんを迎え、スタートした施設です。 1992年に大藤さんは同館の副館長に、1996年には深沢紅子野の花美術館の館長に就任しました。そして2023年には、池内輝雄氏、中村真一郎氏、加賀乙彦氏らが歴任してきた軽井沢高原文庫の館長に就任されました。 大藤さんは30年ほど前から一般向けの文学散歩なども継続的に行っています。2023年には、軽井沢町制施行100年および堀辰雄来軽100年を記念して、堀辰雄文学記念館で「堀辰雄と歩く軽井沢」が開催されました。これに関連する緑陰講座では講師として招かれ、「堀辰雄と軽井沢」と題し、『不器用な天使』から『大和路・信濃路』までの数多くの作品の初版本を紹介するとともに、堀辰雄が所有していた蓄音機を使用して『ブランデンブルク協奏曲』を鑑賞するなど、貴重な体験ができる講座が開催されました。 2024年には、田端文士村記念館で、「室生犀星・芥川龍之介・堀辰雄の交友と文学~軽井沢を中心に~」と題した講演会の講師も務めました。この講演では、田端で親交を深めた室生犀星、芥川龍之介、堀辰雄の3人が、1925ごろ軽井沢で共に過ごし、交友を深めた話や、彼らの友情と創作について講演されました。 生誕100年 辻邦生展-軽井沢と物語の美- 軽井沢高原文庫では今年、「生誕100年 辻邦生展―軽井沢と物語の美―」が開催されます。人間精神の高貴さを物語性の中で追求した作家・辻邦生(1925~1999)は、今年生誕100年を迎えます。『安土往還記』『嵯峨野明月記』『背教者ユリアヌス』『春の戴冠』『西行花伝』などの歴史小説は今も多くの読者に愛されています。山荘のあった軽井沢の地で、自筆原稿、創作メモ、スケッチ、書簡、蔵書、遺愛の品などの多彩な資料約250点を通して、辻邦生の生涯と仕事を知ることができます。 今回の展示で特別協力してくださる学習院大学史料館(霞会館記念学習院ミュージアム)では、辻邦生より寄贈された自筆原稿、創作ノート、書簡など、多数の資料が収蔵されています。学習院大学史料館の協力により、辻邦生ゆかりの地で生誕100年を記念した展示が行われます。各館それぞれのテーマに合わせて、学習院大学史料館の資料が出品される予定です。(ブックセンター・キャンパス店主) 軽井沢高原文庫「生誕100年 辻邦生展―軽井沢と物語の美-」展:7月19日(土)~10月13日(月・祝)

マダニにかまれない対策を 自分やペットをどう守る?

人獣共通の寄生虫を媒介 茨城県内で飼われていた猫が今年5月、マダニにかまれ、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)に感染して死んだ。6月には県内の40代男性が、渡航先の欧州でマダニにかまれライム病を発症した。いずれもマダニが媒介する人獣共通のウイルスが原因だ。自身がマダニにかまれないようにするにはどうすればいいのか、ペットの犬や猫をどう守るのか。寄生虫学が専門で、マダニが媒介する寄生虫など人獣共通寄生虫病の予防に取り組む麻布大学(神奈川県相模原市)獣医学部寄生虫学研究室の平健介教授に聞いた。 関東で初 ―5月にマダニにかまれて死んだ猫は、マダニが媒介するウイルスによりSFTSに感染しました。SFTSは主に関西での感染例が多かったのですが、ペットの猫が感染し死んだのは関東で初めてです。STFSとはどういった感染症ですか。 平 SFTSウイルスによって引き起こされるウイルス感染症であり、このウイルスを持つマダニの吸血時に人や動物が感染します。 ―マダニにかまれると人も動物も感染するのですか。 平 マダニに吸血された人が誰でも発症するわけではなく、発症や重症化リスクは年齢によって異なります。特に高齢者や持病がある人は注意が必要です。 ―感染した場合、人、動物それぞれ、どのような症状が出ますか。致死率は。 平 人が感染した場合の症状は、マダニにかまれてから1〜2週間後に、主に発熱,倦怠感,頭痛がみられます。その後,嘔吐,下痢,食欲不振などの消化器症状が現れます。人の致死率は10〜30%程度とされます。70歳以上の高齢者では死亡リスクが高く,若年層では軽症または無症状であることが多いです。 一方、野生動物は発症することが少ないですが、猫や犬は発症しやすい。猫の致死率は60〜70%以上,犬では10〜30%程度と報告されています。 全国的に分布広がる ―今回、関東で初めて飼いネコが発症したことについてどう思われますか? 平 関東以北でもSFTSウイルスを持つマダニが増えつつあり,人や動物への感染において警戒が一層重要になります。 北海道でも感染マダニが確認されており,全国的に分布が広がっています。まずは(人もペットも)マダニにかまれないように対策を徹底することが,効果的な予防になります。 ―人とペットそれぞれの具体的な予防方法や対策は? 平 マダニは草むらや雑木林などの野外環境に広く生息し、野生動物の通り道に多くみられます。そのため人は、草むらや林に入る際は,長袖・長ズボン,足首を覆う靴下や帽子を着用し、虫よけスプレーを使用することを勧めます。帰宅後に衣類や体にマダニが付着していないか確認することを習慣づけることも重要です。 ペットにはマダニ予防薬を定期的に投与し、散歩後はブラッシングや体表のチェックを習慣的に行うことがマダニ対策として有効です。 野外で具合の悪そうな野良ネコや野生動物を見掛けても、絶対に素手で触らないことも重要。市町村の環境課や保健所など公的機関に連絡してください。 ―万が一、マダニにかまれたらどうすればいいですか? 平 もしかまれたら、人もペットも医療機関や動物病院を受診したほうがいいです。人もペットも、マダニは皮膚に口を深く差し込んで固着しており,自分で無理に引き抜くと口が皮膚に残ることが多々あります。 やむを得ず自分で除去する場合は,マダニ専用ピンセット等を用いて,マダニの体部に圧をかけないようにして,口の根元をつまんで慎重に引き抜きぬく。マダニの口の部分が皮膚に残らないように気を付ける必要があります。除去したマダニは密閉して保管し診察時に持参すると診断の参考になります。 事前に動物病院に連絡を ―もしペットにSFTSの疑いがあって動物病院に行く場合の注意点はありますか。 平 SFTSを疑って動物病院に行く場合は、感染動物から飼い主や他の動物,獣医師への感染リスクがあるため、受診前に必ず動物病院に連絡し,感染対策の準備を依頼してください。 SFTSウイルスは,感染した動物の血液やだ液,体液を介して人にも感染することもあるため、飼い主も手袋・長袖・マスクなどで防護し,ペットとの接触は最小限にとどめるべきです。ペットの運搬には密閉できるケージを使用したほうが良いです。 県、市町村が注意呼び掛け 県生活衛生課によると、5月に死んだのは1歳のメスネコ。室内飼育だったが、4月下旬屋外に出てしまった時に、マダニに刺されたとみられるという。動物病院でダニを除去したが、5月9日に高熱、嘔吐、食欲低下が見られたため再度動物病院を受診。治療したものの12日に死んだ。動物病院がSTFS を疑い12日に県に連絡、検体の血液を検査したところ、15日にSTFSウイルス陽性とわかった。 県では、関西だけでなく北陸地方や東海地方でも近年、SFTSが発生していることから関東にもいると想定。ウイルスがどの程度広がっているかを動物から把握するため、今年3月から県獣医師会に所属している動物病院を対象に、疑わしい症例があった場合は検査を依頼していた矢先だった。 一方、6月にライム病を発症した男性は、5月下旬に滞在していた欧州でマダニにかまれたと推定されている。6月9日に倦怠感、10日に紅斑が出て医療機関を受診した。現在は快方に向かっているという。県内でライム病が発生したのは2017年9月以来、8年ぶり。 県生活衛生課は、県内44市町村に対して5月に猫が死んだ事案を知らせ、注意喚起を促している。ダニが媒介する人獣共通の寄生虫はSFTSやライム病のほか、日本紅斑(こうはん)熱などもあるため、人もペットも注意してほしいとSNSなどで警戒を呼び掛ける。つくば市や土浦市でも市の公式サイトなどで注意を呼び掛けている。(伊藤悦子)