日曜日, 6月 15, 2025
ホームスポーツ開き直った戦い方が良い方につながった 霞ケ浦 高橋監督に聞く

開き直った戦い方が良い方につながった 霞ケ浦 高橋監督に聞く

甲子園初勝利つかみ、秋の大会へ

霞ケ浦高校は7月に行われた第106回全国高校野球選手権茨城大会を5年ぶりに制し、甲子園では2回戦(初戦)で名門の智弁和歌山と対戦。延長11回タイブレークにもつれ込むも、エース市村才樹(2年)と眞仲唯歩の継投でしのぎ5対4で甲子園初勝利をつかんだ。続く3回戦では滋賀学園に2対6で敗れた。息つく暇もなくその4日後に秋季大会1次予選を迎え初戦敗退となった。激動の日々を経験した霞ケ浦の髙橋祐二監督に、夏の大会や甲子園初勝利の感想、秋の戦い方について語ってもらった。

苦しい初戦をものにできて選手がまとまった

―改めまして、第106回茨城大会の優勝と夏の甲子園で学校として初めての1勝おめでとうございます。まず、茨城大会について振り返っていただきたいと思います。大会前のインタビューで、今年はチームの中心選手が不在で選手の一体感がないとおっしゃっていました(7月9日掲載)。大会初戦(2回戦)は太田一に2対2から9回サヨナラ勝利と苦しい試合戦だった訳ですが、優勝に至るまでチームはどのような変遷をたどったのでしょうか。

高橋 全く打てなくて本当に苦しい初戦になりました。負けてもおかしくなかったと思います。ですが、苦しい試合をものにできて、バラバラだった選手たちが少しずつまとまり、どん底の状態から偶然に最高の状態に持っていけました。こういうふうに勝ち上がる展開を計算してできる監督だったらまさしく名将と言えますが、完全に偶然の産物です。今年のチームは本当に力がなかったので、「いつ負けてもいいや」くらいに開き直ったところがありました。

―大会前のインタビューでも「勝ちたい勝ちたいと思わない方が、欲がない方が意外と勝てるのかもしれない」とおっしゃっていました。

高橋 この夏はいろいろな方面から「ちょっと以前とは采配が変わりましたね」と言われることがありましたが、私は別段何かこう変えようと意識していた訳ではありません。開き直った戦い方が結果的に良い方につながったのだと思います。

市村がよくしのいでくれた

8月8日に誕生日を迎えた髙橋監督(左)。生徒たちからお孫さんのユニフォームをプレゼントされたそう

―準々決勝では秋に負けた鹿島学園に、決勝では春に負けたつくば秀英に勝利しました。何か特別な対策はあったのですか。

高橋 2チームとも秋と春に対戦していたので勝つイメージはつかめていました。組み合わせが決まった時に最大の山場になるのが準々決勝の鹿島学園戦だろうと見ていました。鹿島学園は春にも関東大会に出場して非常に勢いがあった。内容的に楽に勝てた訳ではないですが、市村才樹(2年)がよくしのいでくれました。

準備したものを羽成がやってのけた

―決勝のつくば秀英戦では、羽成朔太郎選手がライト前ヒットで一気に二塁を落とし入れる走塁が光りました。あのプレーで試合が動いて霞ケ浦ペースに傾いたように思います。

高橋 チームでは大高先生を中心に相手を分析しており、投手の癖や球種、打者の傾向や守備の隙など、ある程度のデータを蓄積しチームで共有しています。あのプレーはまさにチームで事前に打ち合わせて準備したものでした。しかし、あれを羽成がやってのけたのは私も驚きました。チームを勢いづける素晴らしい走塁でした。

―羽成選手に関しては、雲井選手と共に1年生から出場している中心選手なのに、チームを引っ張れていないと大会前に話されていましたが、その後の評価はどうですか。

高橋 羽成と雲井の二人に関しては期待値に見合った行動をしてこなくて、夏前には私がかなり追い込んでました。初戦から4回戦までは精神的にかなり負担の方が大きかったと思います。その後、準々決勝からは何だかプレッシャーから解き放たれたように輝き出して顔付きが変わり、チームを引っ張る活躍を見せてくれました。彼らの精神的な成長は本当にうれしかったですし、よくぞ期待に応えてくれたと思います。

壮行会で決意表明する高橋監督

込み上げる感情抑えた

―その後の甲子園では、全国優勝経験もある強豪の智弁和歌山に対して延長11回タイブレークの末に5対4で勝利し、遂に校歌を歌うことができました。校歌を聞いた時はどのようなお気持ちでしたか。

高橋 3度目の甲子園にしてようやく勝利してホッとしたのが本音です。強豪の智弁和歌山を相手に何でうちが勝ったんだろうという不思議な感覚と、甲子園初勝利の感動で戸惑っているうちに校歌が流れてきました。途中でやばい、泣きそうだというタイミングがあったのですが、戸惑いの方が強くて込み上げる感情を抑えることができました。

連絡が1000件

―ここまで茨城大会の決勝でたくさん壁にぶつかり、甲子園でも2度の初戦の壁に跳ね返されてきました。OBや関係者からの祝福の連絡が相当あったのではないですか。

高橋 茨城大会優勝時に500件ほど祝福の連絡をいただきましたが、智弁和歌山に勝った時は1000件ほどの連絡を頂戴しました。ものすごい熱量で桁が違いますね。みなさんに同じ文面で通り一遍に返すのも違うと思ったし、次の対戦の準備をしなくてはならない。申し訳ないですが返事が書けていません。この場をお借りして祝福してくださった方にはお礼を申し上げたいです。

―引退した3年生に一言お願いします。

高橋 この夏にみんな力を合わせて頑張ってこういう結果で終われて本当に良かった。この経験を将来の人生の糧にしてもらいたいです。

厳しい日程

―3回戦の滋賀学園には惜しくも2対6で敗れ、翌8月17日に帰茨しました。その4日後の8月21日に3年生引退後の新チームによる秋季県南地区大会1次予選を迎えました。結果としては、江戸川学園に0対2で初戦敗退して、敗者復活戦に当たる2次予選に回ることとなり、秋の県大会のシード権を獲得することは出来なくなりました。この状況について所感をお聞かせください。

高橋 甲子園出場校にとっては厳しい日程です。昨年からこのような日程に変更され、土浦日大は甲子園準決勝の翌日に秋の1次予選を戦いましたが、日程は今年、見直されませんでした。茨城に残った選手たちは直井先生が指導してくれていましたが、私が直接見ることが出来ません。また、甲子園で2試合やったので、応援部隊は0泊3日を2回です。当然その間は練習できないし、疲労ばかり蓄積される。甲子園組も16日間ホテル生活で明らかに体のキレがおかしくなっていました。

新チームによる秋季県南地区大会1次予選は初戦敗退となった

―土浦日大の小菅監督にお話しを伺った時も、日程にもっと配慮して欲しいとおっしゃっていました。

高橋 秋の大会ってその1年間を左右する大事な大会なので、新チームの立ち上げ期間は1カ月程度は必要だと思います。それくらいあれば、選手を色々と試して適性を見極めて地固めをしてから臨めます。県大会のシード4つも(水戸、県北、県南、県西の)各地区で優勝した1チームということになったので、今回もし2次予選を勝ち抜いたとしても県大会はノーシードになります。だからまた初戦で他地区のシードと当たるかもしれません。秋に序盤で有力校がつぶし合う可能性が高いルールになったから、今夏と同じように来夏も力があるのにノーシードのチームが出てくるでしょう。

気持ち立て直して戦う

―2次予選はいかに戦いますか。

高橋 甲子園から帰ってきて選手で話し合い、新チームの目標を「春の選抜甲子園出場」に設定したんです。うちは第62回大会の選抜甲子園に出場しましたが、私が監督に就任してからは一度も出場したことがありません。そしたらいきなり負けました。正直、昨日の負けはショックですけど、しょうがないですねこれは。必死でやったのですが点が取れなければ勝てません。もう後がないわけだからしっかりと気持ちを立て直して県大会の出場権を取れるように頑張って戦っていきます。

7月の地方大会から甲子園、秋の1次予選と休みなくお疲れのところ、インタビューを引き受けていただいた。霞ケ浦の秋の戦いぶりに注目したい。(聞き手・伊達康)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

2 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

2 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

道路が陥没 下水道管損傷か 土浦

土浦市西真鍋町で12日朝、市道が長さ3.9メートル、幅3.4メートル、深さ2.5メートルにわたって陥没しているのが確認された。市道路管理課の発表によると、市道に埋まっていた下水道管が損傷した可能性が高いという。 12日午前8時50分ごろ、市道を車で通行した運転手から市に通報があった。現場の市道は14日現在も通行止めになっている。 陥没した市道に埋設されている下水道管は直径60センチのヒューム管で、地面から4.4メートルの深さに埋まっている。市は下水道管の内部をカメラで撮影するなどして原因を調査している。 さらに陥没箇所が拡大するのを防ぐため、陥没箇所に矢板を打ち込んだり、大型の土のうを設置し仮埋め戻しを実施している。その後、掘削作業を行い、損傷箇所の確認と復旧作業を行うとしている。復旧の時期は未定という。 現場は、水田やハス田が広がり住宅が点在している地域で、近くには保育園もある。陥没箇所は住宅の目の前の市道だった。現場から200メートルほど離れたところに住み、現場近くに草刈りに来た自営業の男性(73)は「ここは長く住んでいる人が多いが、こんなことは初めてでびっくりしている。詳しいことは何も聞いてないので分からないが、近所の人から、軽自動車が通った直後に道路が陥没したと聞いた」と話していた。(鈴木宏子)

テラス空間や屋根付スペースなど検討 中央公園改修へ つくば市が基本計画案

22日まで意見募集 つくば市が、つくば駅前の中央公園(つくば市吾妻、3.8ヘクタール)にテラス空間や屋根付きスペースを新設するなど同公園をリニューアルする基本計画案を策定し、市民から意見を募集している。リニューアル案は、池に面し噴水やつくばエキスポセンターのロケットを眺めることができる場所にテラス空間を整備する、芝生広場の一部に屋根付きスペースを整備する、つくば駅に隣接する南入口にロゴモニュメントを設置するーなど。 中央公園はTX開業後の2010年に、つくば駅に近接する南入口エリアが改修され、ノーベル賞受賞者の業績とメッセージに触れることができる科学モニュメント「未来への道」が整備された。今回のリニューアル案は2010年に次ぐ大規模改修になる。 整備計画案は①つくば駅に近接する南入口エリアについて、フォトスポットともなるロゴモニュメントを設置する、つくば駅からの最短ルートとして本来の園路ではない場所に通り道ができ滑りやすくなっていることから園路を再整備する、ノーベル賞受賞者のモニュメントを再配置し、休憩や待ち合わせのための座れる場をつくる。 ②芝生広場については、整備を検討している屋根付スペースは小規模な催しができるよう電源設備を検討する、芝生部分と樹木部分の間に座れる場を設置し緩やかに区切る③図書館や美術館向かいの遊歩道に面した木陰の空間については座れる場を整備する。 ④池に面した南側のエリアについては、噴水とロケットを同時に眺めることができる公園で一番のビュースポットであることからテラス空間を整備する⑤市民ギャラリーがあるレストハウスは、本館は展覧会等が開催されない日は休憩場所として開放する、本館室内から池の景色を眺められるよう窓際のパネルを可動式に変更する、隣接の別館はチャレンジショップや懇談会開催などさまざまな市民グループが使用できるレンタルスペースとし、使用されない日は休憩スペースとして開放する。 ⑥つくばエキスポセンター向かいの池東側は、低木を伐採したり最小限にして座れる空間を広くする⑦江戸時代後期の古民家を移築したさくら民家園はさらなる利活用を促進する仕組みを検討するーなど。 ほかに、サインや標識、照明はこれまで随時、修繕したり追加設置してきたためデザインがばらばらであることから、統一したデザインにする、植栽は視認性や安全性向上のため中低木は伐採し高木は保全する、トイレはだれもが使いやすいよう改修する、などが計画されている。 市民の意見を聞きながら進める リニューアルについて同市学園地区市街地振興課は、22日まで市民の意見を募集し、市民の意見を聞きながら進めていきたいとしている。 今後のスケジュールは、今年度中に基本計画を策定、2026年度に基本設計や実施設計をし、27年以降順次、工事を実施する予定だ。工事期間や事業費がいくらになるかについては、まだ計画内容が定まっていないため現時点で未定という。 科学万博の40年前に開園 中央公園は、広い水面や森をイメージする緑、明るい芝生など周辺の文化施設と調和した広がりを感じさせる空間として計画され、つくば科学万博が開催された1985年に開園した。開園から40年経ち、老朽化部分への対応のほか、時代と共に変化する市民ニーズに対応するため、24年度にリニューアルに向けた調査を実施。今年1月、リニューアルに向けた基本的な考え方を公表した上で、基本計画案をまとめたとしている。 同公園では現在3期目の五十嵐立青市長が就任してからこれまで、2018年と19年に社会実験としてバーベキュー(BBQ)とカヌー体験を実施(18年8月3日付)。18年度は事業費約900万円で8月に14日間開催し、BBQは175組925人(1日平均12.5組66人)、カヌーは355人(同平均25.3人)の利用があった。19年は事業費約660万円で8月に17日間開催し、BBQは120組635人(同平均7組37.3人)、カヌーは190 人(同平均11.1人)の利用があった。20年8月には活性化と水質浄化を目的に約3760万円で池に噴水を設置した(20年8月25日付)。(鈴木宏子) ◆中央公園リニューアル基本計画案は市ホームページで公表し、22日(日)まで市ホームページで意見を募集している。13日(金)から19日(木)午前10時から午後4時まで中央公園内レストハウス本館でオープンハウスを開催、市職員に質問したりアンケートを出すことができる。

難民支援へ連帯 つくば市役所を青色にライトアップ

6月20日は世界難民の日 国連が定めた「世界難民の日(6月20日)」を前に12日夜、つくば市役所本庁舎東側壁面が4灯の青いライトで照らされた。ライトアップの期間は12日から29日まで、毎日夜7時から10時まで点灯される。 世界難民の日は、難民の保護と支援に世界的な関心を高めることを目的に2000年12月4日に国連総会で決議された。各地の建物を国連のシンボルカラーである青色でライトアップすることは、難民支援への連帯を示す。世界約130カ国で難民支援などに取り組む国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の駐日事務所が、この日に合わせて呼び掛けた。 県内ではつくば市役所のほか水戸芸術館(水戸市)が参加している。ほかに札幌市時計台(札幌市)、鶴ケ城天守閣(福島県会津若松市)、都庁第一本庁舎(東京都新宿区)、東寺(京都市)、熊本城天守閣(熊本市)など全国67カ所が青色にライトアップされる。また期間中は、国連大学(東京都渋谷区)やの佐賀県庁旧館(佐賀市)など全国6カ所で「世界難民の日こいのぼり」が掲揚される。 つくば市は今年5月、UNHCRが進める国際キャンペーン「難民を支える自治体ネットワーク」に加入し、5月18日に市内で行われた科学と国際交流イベント「つくばフェスティバル2025」内で同ネットワークへの加入署名式が行われ、UNHCR駐日主席副代表代行の桒原妙子さんと五十嵐立青市長が同ネットワークへの賛同表明文に署名した(5月19日付)。昨年、同市は世界難民の日に合わせて、2021年に開催された「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」に参加した難民アスリートの活躍やヒューマンストーリーを収めた「難民アスリート写真展」や、市国際交流協会主催の国際理解講座「世界お茶のみ話」で「難民ワークショップ」を開催するなど、難民支援への理解啓発に取り組んできた。 企画を担当する同市国際都市推進課は「今回の企画を通じて多くの市民が難民問題に関心を持つ機会につなげたい」とし、「つくば市には多様な国や地域出身の方が暮らしている。誰にとっても暮らしやすい街にしていきたい」とする。一方で「他の国々には、さまざまな環境の中で現地に留まらざるを得ない方々もいる。そういった方々へ、UNHCRを通じて今後も支援をしていきたい」と思いを語った。今回のライトアップにかかる事業費はライトの設置費など約50万円という。(柴田大輔)

スズメの親子《鳥撮り三昧》2

【コラム・海老原信一】今回は前回(5月8日掲載)触れました「スズメの親子」への思いを話します。22年前、那須高原の観光施設の一角に土木用重機が置かれており、その傍にスズメの親子がおりました。姿勢を低くして近づき、数枚を撮影。内心、良いのが撮れたぞとの思いでした。 その後も空き時間は野鳥撮影に費やす日々が続き、野鳥を撮影することに専念すべく、56歳でそれまで勤めていた会社を退職。体力はまだ十分ありましたから、その後3年間、毎日、野鳥の撮影に走り回っていました。そんな日、ふと「野鳥の写真を撮るって彼らの生活の中に踏み込むってことかな」との思いが湧きました。 スズメの親子の画像を撮り、自分では良いのを撮ったぞと思っているけど、本来なら逃げてしまっても不思議ではないはずだ。逃げなかったのは、親から子に食べ物を受け渡す最中であったからで、逃げるという選択肢は無かったからなのだ。やはり彼らの生活の中に踏み込んでいたのだ。 撮れたぞと思っていたけど、撮らせてもらえたと言うべきなのだ。改めて野鳥との関わり方を考えさせられることになりました。それからは、彼らの生活に入り込む以上、彼らの許してくれる距離以上には極力踏み込まないように気を付けてきました。すると面白いことに気づきました。 人とスズメの間の難しい関係 決定的瞬間には程遠いけれど、彼らの普通の表情が見られるようになってきたのです。もちろん、いつもという訳にはいきませんが、私の中での大きな変化でした。そんな時は「ありがとう」とつぶやいています。健気なところを見せてくれる彼らの姿に、彼らを知ることの楽しさを知って欲しいとの気持ちから写真展を開催しようと決めました。 親子の写真一枚が自分の心持ちを変えさせ、個展を開催しようと決めるインパクトを持つとは思いもしませんでした。たかが「スズメの親子」、されど「スズメの親子」でした。来月7月には50回目を迎える個展ですが、「親子」にも出てもらいます。 スズメのことをもう少し話します。昨今、スズメが少なくなったとの話を聞くことが増えました。70歳代の私が知っている限り、子供のころはうるさいほどいました。それからすれば確かに少ない。スズメは人の近くで生活し、人けのない所には棲まない。人家のない所には居ない。要は、家などの隙間を利用して営巣するからで、スズメが少なくなった理由の一つに最近の住宅の造りによるとの説も。近ごろの家は熱効率アップのために隙間がない。スズメが巣を作れないからではないかと。 だとすれば、人とスズメの間にはなかなか難しい関係がありそうですね。人家に営巣するツバメにとっても同様の悩みごとがあると聞きます。(写真家)