【コラム・小泉裕司】8月2日、3日は、「土浦の花火」や「大曲の花火」とともに日本三大花火と言われる「長岡まつり大花火大会」(新潟県)。昨年は、信濃川河川敷の会場に2日間で38万人が訪れたという。
作品の順番を決める土浦や大曲の競技大会とは違い、長岡は8月1日から3日にかけ行われる「祭」行事としての花火大会。「祭」は1945年8月1日の長岡空襲からの復興を願い、翌年から始まったが、「花火大会」はこれとは別に1879年が始まりとされ、今年で145年目を迎える。
長岡市民の「熱い想い」が込められた花火大会に魅せられた多くの長岡花火ファンが、全国から訪れる。ちなみに、長岡花火を見て育った山本五十六元帥と土浦花火とのつながりは、こちら(2023年11月3日掲載)をご覧いただきたい。
白菊3発
「空襲で亡くなられた犠牲者の慰霊と平和への祈り、10号玉3発、打ち上げ開始でございます」。女性アナウンサーによる名物アナウンスに続いて、信濃川上流方面に「白菊」と呼ばれる銀色の菊花火が連続して打ち上がり、長岡の花火劇場120分間の幕が開く。
天地人花火
長岡ゆかりの大河ドラマを記念して登場した超ワイドスターマイン。打ち上げ担当は野村花火工業(水戸市)。2発同時に打ち上げる五重芯花火の対打ち、野村ブルーの八方咲きなど、野村花火のもてる超豪華玉を惜しげもなく投入する。野村陽一社長おすすめの花火だ。ドラマのテーマ曲にシンクロした圧巻の3分間は、初日のみのプログラム。
翌日は、「花火 この空の花」。大林宣彦監督の映画「この空の花 長岡花火物語」を記念したプログラム。マルゴー(山梨県)が打ち上げを担当し、十八番の時差式発光花火と映画の主題曲がシンクロした超ワイドスターマイン。
復興祈願花火フェニックス
新潟県中越地震(2004年)からの復興を祈念して、翌年から始まった超ワイドスターマイン。平原綾香さんの Jupiter(ジュピター) に合わせて、幅2キロ9カ所にわたり次々に打ち上がる花火が夜空を埋め尽くす。不死鳥フェニックスを模した花火も見逃せない。長岡花火煙火協会の阿部煙火工業、新潟煙火工業、小千谷煙火興業の3社が区間を分担して打ち上げている。
2017年に訪れた際、隣席の男性がフェニックス花火を見上げながら鼻をかむほど号泣されていた記憶がよみがえる。
正三尺玉3発
サイレンが鳴り響いた後、直径約90センチ、重量300キロの正三尺玉(しょうさんじゃくだま)が打ち上がる。開花高度は600メートル、開花の大きさは650メートル。製作に1年半を要するというが、まさに花火技術の粋を集めた傑作である。
ちなみに、花火玉の大きさを表す「三尺」は打ち上げ筒の内径の寸法をいうが、それに対して「正三尺」は玉の直径が三尺(直径90センチ)の花火玉をいう。新潟県民は「大玉好き」と言われるが、8月3日開催の「古河花火大会」(茨城県)をはじめ全国で打ち上げられる三尺玉のほとんどが新潟県産とのこと。
映画館で長岡花火
6月28日から7月18日まで全国の映画館で公開された「中越地震復興20周年祈念ドキュメンタリー 「長岡大花火 打ち上げ、開始でございます」は、花火界では前例のない試みだった。日頃は立ち入ることのできない打ち上げ現場からの映像や裏方の活躍など、大スクリーンに映し出された映像は、思い切りの臨場感とその美しさ、迫力に圧倒された。
そして、8月2日、3日は、史上初となる全国の映画館でのライブビューイングが行われる。チケットは7月21日までこちらで申し込み受付中。我が家は、長岡現地への派遣、映画館と自宅テレビに分かれて長岡花火の魅力を堪能する予定。
本日は、この辺で「打ち留めー」。「しゅるしゅるしゅる だーん ずしーーーん」(花火鑑賞士、元土浦市副市長)
<参考文献>
「白菊」(山﨑まゆみ、小学館、2014年7月刊)
「長岡大花火 祈り」(長岡まつり協議会・文藝春秋、2006年6月刊)