【コラム・浅井和幸】いつも話が食い違う2人がいます。同意したはずなのに、そのときになってみると、「言った、言わない」の押し問答になってしまいます。何がこの食い違いを生んでいるのでしょうか?

人は記憶違いをすることもありますから、この2人の会話や考え方を具体的に追う必要があります。

あるときは抽象的な言葉が原因です。「次のテストを頑張ったらゲームを買ってあげる」という約束があった場合、この「テストを頑張ったら」の捉え方が「テスト点数が上位に入ったら」と「テスト勉強を頑張ったら」とに違ってくるでしょう。

あるときは主語が抜けていることが原因かもしれません。日本語は主語を抜いて話をする特性を持っています。「今日は雨が降るかもしれないので、屋外に出してあるものを片付けてから外出しよう」「うん、わかった」。さて、誰が片づけをするのでしょう?

言葉の定義が全ての人に共通でない

「次のイベントで収支がマイナスだったら、来年度からイベントは中止しよう」。さて、どの範囲の収支を指しているのでしょうか。イベント出店の一つ一つを指しているのか、それとも全体なのか? 中止にするのはイベント全体なのか、それとも出店一つ一つなのか?

「ゴールポストを動かす」という言葉もありますが、言葉の定義とか概念が全ての人が共通であるとは言い切れません。同じ日本語ではありますが、違うものを指していることもあるのです。違うことである可能性も探ることは、「言った、言わない」を避けるためにも必要なことなのです。

約束の食い違いが多いと感じるときは、相手に悪意があるかどうかを探るよりも、それぞれが同じ言葉だけれど、別の約束をしていたのではと捉え直すと解決するかもしれませんよ。(精神保健福祉士)