新年を前に、つくば市吾妻の古書店ブックセンター・キャンパス(岡田富朗店主)店内のショーケースで「年賀状展」が開催され、主に明治、大正、昭和に活躍した著名な詩人、作家、画家、政治家などの年賀状180枚が展示されている。
「赤堂鈴之助」で知られる漫画家、武内つなよし(1922-1987)は、愛嬌(あいきょう)のあるイラストを添えてある。牛久沼のほとりに居住し「橋のない川」で知られる小説家、住井すゑ(1902-1997)は、年賀状の名前が住井すゑ子となっている。日本で初めて長編SF小説を書いた今日泊亜蘭(きょうどまり・あらん、1910-2008)は干支のネズミの絵と独特の文体で書いている。
ほかに小説家の志賀直哉や田辺聖子、詩人の石垣りん、芸術家岡本太郎の父親で漫画家の岡本一平、落語家の3代目桂米朝、政治家の福田赳夫などの年賀状が展示されている。
店主の岡田さん(87)が古書の市場などで収集したもので、「筆体、文体などから、その人の生き様が垣間見える」という。
同店では店内での企画展を2019年に開始、今回で18回目の開催となる。前回17回目の「蔵書票展」には県内のほか神奈川県などからも愛好家が訪れている。
岡田さんは18歳の1954年に東京都北区赤羽で古書店を開業、つくば科学万博開催1年前の1984年につくば市天久保の天久保ショッピングセンターに移った。その後同ショッピングセンターには計5店が軒を並べ、古書店街としてにぎわった。しかし30年以上続いた岡田さんの店が閉店、2018年に最後の1店が閉店して古書店街はつくばから姿を消した。岡田さんをよく知る古書店ファンの要望もあり、2003年に同吾妻に移転し再開。現在は娘と2人で営業し、広さ約160平方メートルの店内に江戸時代や明治、大正、昭和の郷土史や軍事本など数万冊の古書を販売している。
岡田さんは70年近く古書店業界に関わってきたが「今は本が一番売れない時代。良い本を100円にしても売れ残る。つくばは学者肌の人が多いので専門書も扱うが、改訂版が出ると元の本の価値が激減し経営はなかなか難しい」とも言う。
次の企画展については「新聞の創刊号のコピーを多数持っているので(日本新聞協会が制定した)『新聞を読む日』にあたる4月6日に開催できれば良いかなと考えている」と話す。(榎田智司)
◆同店はつくば市吾妻3-10-2、「年賀状展」は2024年1月31日まで開催、入場無料。年内の30日(土)と31日(日)は午前9時~午後5時まで営業。同店は不定休だが急に変更になることもあるので、ご来店の際は電話029-851-8100に連絡を。同店のホームページはこちら。
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