【コラム・野末彰子】
閉経とは?
卵巣からの女性ホルモン(エストロゲン)の分泌がなくなり、月経が永久的に止まった状態のことを閉経と言います。日本人では、平均すると50~51歳くらいで閉経すると言われています。実際には、月経が止まった時点で、閉経かどうか判断するのは難しく、医学的には「1年間以上、月経が来ない状態」と定義されています。
閉経後出血
閉経したはずなのに、また月経が再開することはあるのでしょうか?
完全に閉経するまでの数年間は、月経はかなり不規則になります。そのため、この時期は不正出血(異状な出血)と、不規則にきた月経とを区別することはとても難しくなります。しかし、1年以上無月経だったのに、再び性器出血が始まる場合(閉経後出血)は、何らかの病気が隠れていることが多く、注意が必要です。
子宮体がん
子宮がんには、子宮頸(けい)がんと子宮体がんの2つがあることをご存じでしょうか?
子宮には頸部という膣に近い部分と、体部という妊娠すると膨らむ部分の2つの部位があり、それらの2つの部位にできるがんは、別の種類であり、その性質は全く異なります。子宮頸がんは30~40代に好発しますが、子宮体がんの好発年齢は50歳代で、約70%は閉経後女性に発症します。
子宮頸がんはそのほとんどがヒトパピローマウイルスの感染によって発症しますが、子宮体がんとウイルスは無関係です。また子宮体がんになりやすい人の特徴は、未婚、不妊、若い頃からの月経不順、糖尿病、高血圧、肥満などがあげられます。主な症状は不正出血で、約9割で性器出血を認めます。
近年、子宮体がんはとても増えてきており、ここ20年で3~4倍になっていると言われています。この原因は食事の欧米化、少子高齢化などいろいろなことが言われています。
その診断方法
子宮がん健診は、市町村での集団健診やドックのような個人健診など、いろいろな実施の機会があります。しかし、集団検診などの一般的な健診で実施されているのは、子宮頸がんの検査のみであることを皆さんはご存じでしょうか?
不正出血がある、月経が不規則であるなどの一定の条件を満たした場合や、本人が希望した場合などを除き、子宮体がんの検査までは実施されていません。そして、子宮頸がん健診では、子宮体がんを見つけることはできないのです。
子宮体がんの診断は、子宮体部から細胞を採取してくることが必要です。頸部の検査より、子宮の奥から細胞をとるので、場合によっては痛みや出血を伴います。ですから集団検診では実施できず、人間ドック施設や医療機関で行われます。
その治療方法
子宮体がんは不正出血が主な症状であり、これを見逃さなければ、早期がんで見つかることが多い疾患です。早期であれば、手術だけできちんと治すことができます。手術では子宮や卵巣、卵管などを摘出します。卵巣・卵管は子宮体がんが転移しやすい場所です。また子宮に近いリンパ節も摘出して、転移がないかどうかを確認していきます。
早期がんであれば、今は腹腔(ふくくう)鏡下手術も可能で、小さいキズで身体への負担も少なく治療することができます。しかし、進行してしまうと、手術だけで治すことができず、抗がん薬治療や放射線治療などが必要になります。症状を見逃さず、早期に受診して診断を受けることが大切です。
ドクターから一言
子宮体がんは早期に見つけることができる疾患です。早期であれば、例えがんになっても完治が可能です。健診を受けることはもちろん大切ですが、閉経後不正出血など、些細(ささい)と思われる症状を見逃さず、心当たりの症状があった場合は医療機関に相談しましょう。(筑波メディカルセンター病院 婦人科診療科長)