【コラム・平野国美】岡山県の真庭市に久世(くせ)という町があり、地元の方と話したことがあります。毎年10月24~26日に久世祭りが行われるのですが、土曜・日曜を考慮せず、昔からこの日程で行っているそうです。
平日だと、この町から出た人はやってくるのが大変でしょうと聞くと、「生まれたときから、この祭りになじんでいるから、必ず帰ってくる。来るか来ないか、はっきりしないやつには電話をして、練習中の祭り囃子(ばやし)を聞かせてね。サバ寿司でも食べに来いと話すと、大体、帰ってくるね」と話すのです。
場所は変わり、私が生まれた龍ケ崎市。昔は立派な商店街でしたが、残念ながら、今は人通りもまばらです。しかし、夏祭りには、どこから湧いてくるのかと思うほどの人波ができるのです。私に祭りに出るか聞いてくる電話はありませんが、フェイスブック(FB)でその準備がされていく様子を見ると、心が躍るのです。
神主さんや町衆が、その日に向かって宮薙(みやなぎ)から入り、御神酒所の設置を始める様子を見ていると、子供のころを思い出すのです。FBは面白いのですが、実際に見ると、お祭りの歴史や神を感じるのです。撞舞(つくまい)という奇祭には、他では味わえぬ雰囲気があると思うのです。
独特の民族性を感じる街
山陰や山陽の山間部に、独特の民族性を感じる街があります。津山、真庭、新見、三次、倉吉などです。街並みだけでなく、暮らす人たちの独特の精神性を感じます。龍ケ崎にも、そこと同じような雰囲気を感じます。私は、今、つくば市在住ですが、龍ケ崎に住んでいたときには、気づかなかったもの、感じなかったものが色々見えてきます。この歳になって、やっと故郷に興味を持ち始めたのかも知れません。
最近、総務省が言い出した言葉に「関係人口」があります。定住している人とは異なり、地域づくりに流動的に関わる人たちを意味します。定住人口はその地域に移住した人ですが、交流人口は観光などで訪れた人を指します。「行き来する者(風の人)」「地域内にルーツがある者(近居・遠居)」「何らかの関わりがある者(過去の勤務や居住・滞在)」などです。
こういった人口区分は、人口減少時代らしい分け方ですが、現在の私にはすべてが当てはまりそうです。いずれにしろ、その土地に何らかの魅力がなければ人は振り向かないでしょう。(訪問診療医師)