【コラム・片岡英明】私は霞ケ浦高校で卒業生を10回送り出したが、常総市に住む6回目の卒業生からもらった年賀状に、子どもが中学受験で苦労していると書かれていたので、先日、常総市の受験事情を聞いた。
常総市は人口6万人弱。市内には、水海道一高という伝統校も含め、県立高校が3校ある。つくば市は人口25万人なのにたった3校なので、常総市の中学生の県立高受験環境は恵まれていると思っていたが、どうも違うようだ。そこで、今回はつくばエリア内の常総市の県立高入試を考えたい。
地元の水海道一高入学は37人
2023年春の常総市の中学卒業生は521人。県立高の定員は、水海道一高6学級、水海道二高6学級、石下紫峰高4学級―合計16学級で640人。常総は卒業生より県立高入学枠が大きい市といえる。
では、なぜ常総の受験生が苦労しているのか? その指標として水海道一高への入学数を見ると、2023年入試で常総市から水海道一高に入学した生徒は37人と少ない。
市別の入学者を調べると、①守谷78人、②つくばみらい48人、③常総37人、④坂東30人、⑤つくば29人―である。生徒が増えているTX沿線からの入学が多く、地元中学生が水海道一高への入学に苦戦している。
試験で合否を決めるので、成績上位者が入るのは当然。また、上位者に遠くからでも入学してほしいとの意見もあるが、「地域の伝統校」とは何だろう?
伝統校には、〇〇大学何名合格だけでなく、大卒後の豊かな社会人を視野に入れ、「ノブレス・オブリージユ」をめざす面がある。ともに学び、青春し、進路で花を咲かせる―学習のノウハウもある。さらに、卒業生のネットワークが地元の産業や文化をしっかり支える。
高校はある意味、「港」である。出港し、地元の卒業生は港に戻ってくる。それが地域になくてはならない伝統校の価値をさらに高める。
中高一貫でますます狭き門に
水海道一高に注目して、常総市の中学生の進学先を並べてみる。
▽21年入試:①水海道二98、②石下紫峰78、③水海道一52(7学級)
▽22年入試:①水海道二99、②石下紫峰69、③守谷56、④水海道一49(6学級)
▽23年入試:①水海道二84、②石下紫峰71、③守谷41、④下妻二38、⑤水海道一37
21年は市内3校が上位を占めたが、22年は水海道一が4位、23年は5位となった。常総の中学生が市外の県立高にかなり入学している。水海道一は付属中設置に伴い、22年から7学級募集が6学級、25年からは5学級となる。地元中学生の水海道一高への入学はますます困難になる。
付属中に入って高校に進級する生徒もいるので、高校の減少分は相殺されるという意見がある。しかし、常総から付属中に入学した生徒は少なく、22年の付属中1期生は4名であった。
つくばエリア内の常総の高校入試でも、TX沿線の県立高校不足のため、このような激震が起きている。つくばエリア全体の小中学生にとって、県立高新設が焦眉の課題であることを示している。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)