【コラム・浅井和幸】日々、様々な相談に対応している浅井心理相談室。過去に下記のようなやり取りがあったとか、なかったとか。
「甥(おい)っ子が家出をして、どうしてよいかわからない」と、叔母に当たる女性から相談がありました。親子の不仲が原因の一つであるのは間違いないのですが、甥っ子は借金をしていました。無職の甥っ子は母親(来談者の姉)にそれをとがめられ、死んでやると家出をして、1週間ほど行方不明になっていました。
LINEをしても、電話をしても、応答がありません。うろたえている姉を見かねて、その方は相談に訪れたそうです。もう諦めたほうがよいのでしょうかという来談者に、とりあえず下記のことをしてみるように伝えました。
▽今までの半分のペースで、LINEを送る。内容は、何かをアドバイスするのではなく、心配しているとか、あいさつ程度の短い内容のものにする。
▽LINEで、浅井という人に相談していることを伝える。電話番号も一緒に。心配しているよと。
「アルバイトで返せる額じゃないかな」
次の日の昼、来談者の甥っ子から私に電話がかかってきました。
浅井「はい、浅井です」
甥っ子「〇〇です。叔母から聞いて電話をかけています」
浅井「ずいぶん、つらそうだね。力も出ない様子だけど、ちゃんと食べている? 心配だな」
甥っ子「一昨日ぐらいから何も食べていません。もう死にたいです。死ぬしかないんです」
浅井「どうして?」
甥っ子「借金をして、仕事もしていないし、返せないし…。このままだと、親にも迷惑をかけてしまうから」
浅井「そうなんだ。それはつらいね。ところで、君みたいに若い男の子が死ななければいけないほどの借金って、何億円ぐらい借りたの? というか、よくそんなに借りることができたね」
甥っ子「いえ、そんなには大きい額では…」
浅井「そっか。じゃ、何千万円ぐらい借りたの?」
甥っ子「いえ、そんなには…」
浅井「そうかぁ。細かくはいいから、だいたい、どれぐらいの借金があるの?」
甥っ子「〇〇〇万円です」
浅井「それは大変だね。でも、そのぐらいの額だったら、ちょっと良い大きめのバイクか、軽自動車の新車が買えるぐらいだね。君ぐらい若い男の子ならば、その辺のアルバイトをして返せる額じゃないかな」
甥っ子「そんな感じですか? でも、何もかも嫌になって」
「今日1日は生き、また電話して」
この間に色々と話をして、本人の様子や、どんな場所にいるのか、雰囲気で予想していました。
浅井「でも周りが敵ばかりに感じて、つらいよね。もうどうなってもよいって感じるんだね」
甥っ子「はい」
浅井「遠くにいるということだけど、場所さえ教えてくれれば、迎えに行くか、何か方法を考えるよ。でも、すぐにとも、無理にとも言わない。その代わり、今日1日は生きてみて。夏だけど、ちょっと外は寒いかな。けど頑張って考えてみて。それでよかったら、明日、また、電話してよ」
甥っ子「わかりました。もういいです」
後日、私が電話をした次の日に帰ってきたと、母親から電話がありました。その後、来談者からも、お礼の電話とおいしいクッキーが届いたとか、届かないとか。いや~、いただきものはうまい。(精神保健福祉士)