金曜日, 9月 19, 2025
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ひたちなか市と原発広域避難協定締結 土浦市など14市町村

【鈴木宏子】土浦市など県南と鹿行地域の14市町村は29日、ひたちなか市と原子力災害広域避難協定を締結した。東海第2原発(東海村)で過酷な原子力災害が発生した場合、14市町村はそれぞれ避難所を設置し、ひたちなか市民を受け入れる。

ひたちなか市は、東海村に隣接する一部地区が直ちに避難をする5㎞圏内(PAZ)、市全域が段階的に避難を実施する30㎞圏内(UPZ)となっている。東海第2原発で過酷事故が発生した場合、住民15万7000人全員が市外に避難することを余儀なくされる。このうち14万3000人は居住地区ごとにそれぞれ土浦市など14市町村に避難し、1万4000人は千葉県内の10市村に避難するという。

同日、土浦市役所で協定締結式が催され、土浦市の中川清市長ら14市町村長らが参加。ひたちなか市の本間源基市長と一人ひとり協定書を取り交わした。

本間市長は「ひたちなか市民を受け入れていただくことに感謝し、万が一のときは皆様にご協力いただきたい」と述べた上で、「前例のない、15万7000人全員の避難がいかに困難を極めるものであるかを感じている。寝たきりの人もいるし、施設に入っている人もいる。果たして市民が間違いなく避難先に到達できるのか、どういうルートで避難するのか、地震による道路や橋の被害も想定しないといけない。5㎞圏内から順番に避難しなくてはいけないが、(30㎞圏内の)住民感情からすると一刻も早く、という気持ちになると思う」と広域避難の課題の大きさを指摘した。

その上で、東海第2原発の再稼働問題について周辺6市町村で安全協定見直しを求めていることについて触れ「あと一歩というところ。福島をみると5㎞、10㎞に避難が限られることはなく帰宅困難区域もある。(原発立地の東海村以外も)再稼働に関し意見を申し述べられる権利があるのは当然」と強調した。

中川市長は「万が一のときは住民の命を最優先に考え、ひたちなか市からの避難者に最大限の支援をしていきたい。14市町村も連携を図り、互いの防災力向上を図っていきたい」などと応じた。

ひたちなか市の避難者を受け入れる14市町村は、土浦、石岡、龍ケ崎、牛久、鹿嶋、稲敷、かすみがうら、神栖、行方、小美玉市、美浦村、阿見、河内、利根町。

土浦市の場合、1万6600人を受け入れるという。市内の小中高校など34カ所に避難所を設置し物資を提供、ひたちなか市職員が到着次第、避難所の運営を引き継ぐ。避難所開設期間は1カ月間程度。一方、地震と原子力災害が同時に発生し、土浦市民も避難所生活を余儀なくされ避難所が満杯になった場合はどうするかなど、課題が多く残っているという。

協定締結式に参加した14市町村長ら=同

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旅費条例改正案「市民の理解得られない」 国内や海外出張をする際につくば市長や市職員らに支給される旅費について定めた市職員旅費条例改正案が開会中の同市議会9月会議に提案されている。17日開かれた市議会総務文教委員会(木村清隆委員長)で同条例改正案について審議が行われ、市長が海外出張の際に利用する航空機の運賃について、現在の旅費条例がビジネスクラスまでとなっているにもかかわらず、改正案はファーストクラスまで利用できるようになることに対し委員から「市民の理解が得られない」などの意見が相次ぎ、同改正案は賛成少数で否決された。議会最終日の10月3日、本会議で改めて審議される。 同改正案は、国家公務員旅費法が改正されたのに伴って、同法にもとづき市の旅費条例を全面的に改正する内容。円安の進行などにより宿泊費などの上限も大幅に引き上げられる。 海外出張の際の航空機の運賃について現在の市職員旅費条例は「最上位の直近下位の級の運賃」(27条)と市独自に定め、市長はビジネスクラスまでしか利用できない。一方、来年4月施行予定の条例改正案は、海外出張の場合、市長には「最上級の運賃の額」を支給できるようになり、ファーストクラスを利用できるようになる。 17日の委員会での市人事課の説明によると「国家公務員の旅費法をよりどころに旅費を3段階で設定した。特別職は出張に伴う負担が大きいため長時間の移動時間を活用して体調を維持する必要があるためより高い上限を設定した。茨城県知事や他市・区を参考にした」などとし、「必ずしもファーストクラスに乗らなくてはいけないものではなくて出張に応じて適宜判断する」とした。 これに対し委員から「ビジネスクラスでも十分体調を養うことができる。ビジネスクラスとファーストクラスは値段が違い過ぎる。現在の条例の規定をどうして緩めるのか。五十嵐市長は(ファーストクラスに)乗らないと思うが、だれが市長になっても市民感覚に合わせたものにすべき」(小森谷さやか市議=市民ネット)▽「(3段階の運賃設定のうち)ファーストクラスに乗れるというのは内閣総理大臣と一緒になる。実際に乗らないとしても乗れるように(条文改正)することが理解できない。今、政治に厳しい目が向けられている」(樋口裕大市議=Nextつくば)▽「ビジネスクラスでヨーロッパに行くのに現在100万円くらいかかるがファーストクラスは2倍の200万円かかる。他市町村長は年に1回か2回しか海外に行かないのに、つくば市長は年に何回か行っている。市民の税金で行くのに市民にどう説明できるのか。つくば市には東京都が定めているような海外出張の運用指針もない」(山中真弓市議=共産)▽「ファーストクラスにする必要はない。市民感覚からすればビジネスクラスで十分」(飯岡宏之市議=Nextつくば)など厳しい意見が相次いだ。 採決で賛成したのは塩田尚市議(つくばクラブ)と渡辺峰子市議(公明)2人だけで、同条例改正案は否決となった。議会最終日の10月3日は修正案が出される見通しという。 つくば市長の海外出張をめぐっては、今年2月と6月の市議会定例会議一般質問で山中真弓市議(共産)が取り上げ、五十嵐立青市長は直近3年間で計5回の海外出張を行い2365万円の市税を使ったこと、海外での宿泊費が市職員旅費規則に定められた金額を超過し、市の規定が骨抜きになっていることから、旅費規程の見直しが必要だ、などと指摘した経緯がある。(鈴木宏子)