【コラム・奥井登美子】霞ケ浦市民協会主催のクリスマスリース作りの日が迫ってきた。「どんぐり山」から採ってきた葛(かずら)などの蔓(つる)植物を利用する。この山は、かすみがうら市加茂の岡野静江さん(故人)が提供してくれた土地に、子ども達と一緒にどんぐりの種をまいて、みんなで育てた山である。2000年10月、130人もの人が参加して森を造った。
岡野さんは、若いころに恵泉学園の助手をしていた人で、植物利用の大家。特にリース作りは天才的に上手だった。東京・四谷の教会の大きなリースをはじめとして、クリスマス前になるとリースつくりで忙しそうであった。
「どんぐり山」は近くにエノキの木があって、2005年に日本の国蝶「オオムラサキ」が自然発生してからは、「オオムラサキ観察会」の場として、市民協会が草刈りなどの手入れをしている山である。
行事のときの私の役目は救急係。皮膚科前の薬局の薬剤師を10年間経験し、いろいろ勉強させていただいた。どんな虫に刺されたら、医者と薬剤師はどんな手当をすればいいのか大体のことはわかっているが、困ったのはヤマカガシの蛇対策である。
面白い個性的な蛇 ヤマカガシ
加茂の辺りは、マムシはいなくなったが、ヤマカガシはかなりたくさんいた。面白い個性的な蛇で、人間に友好ムード。何を考えて行動しているのかわからないことが多い。
ある日、山に観察会の下見に行って、木の枝の途中で遊んでいるヤマカガシ君を見つけてしまった。私の目の高さ。「一体何をして遊んでいるのだろう」。じっと、目をこらして観察していたら、いきなり50センチ以上離れた私のおでこに飛びついてきた。
かまれないように、とっさに払いのけて、無事だったものの、油断をしていると、意表を突いた行動に出ることもわかった。
マムシ君の方がおとなしくて平凡で付き合いやすい。最近の朝日新聞「くらし」欄の「患者を生きる」に、ヤマカガシにかまれてしまった人が、抗毒素を手に入れ、治療をするまでが大変だったという苦労話がくわしく書いてあって、とても勉強になった。
今年の夏の暑さは異常だった。この気候を乗り越えた数少ない強い虫や蛇たちが、どんな行動をするのか、興味深い。(随筆家、薬剤師)