【コラム・田口哲郎】
前略
JR常磐線の普通列車にヘッドマークがついており、「体験王国いばらき」とありました。デヴィ夫人が女王だと宣伝していましたが、なんだろうと思って調べてみました。
特設のホームページがあり、「体験王国」キャンペーンは、茨城県とJR、関連業者など、全県をあげて行なう国内最大の観光キャンペーンとのことだそうです。
コンセプトは「コロナ禍で変わるライフスタイルと旅行への意識。体験の質、感動の深さ、日常生活へのフィードバック。茨城DC(デスティネーションキャンペーン)では、本県の強みである3つのテーマに沿ったコンテンツを組み合わせ、一人ひとりの“ものさし”に寄り添える、新たな茨城観光のカタチを提案していきます」とあります。
観光もコミュニケーションの時代
コロナ禍で変わったのはライフスタイルだけではありません。街と人の関係性が変わりました。とくに関東は東京一極集中があり、東京に物理的に行かなければ、買い物も娯楽も観光もなかったものが、オンラインが発達したおかげで、東京に行かなくても済むようになりました。
人びとが東京に向けていたお金と時間が、ほかの行き先を求めています。寝に帰るだけだったベッドタウンにも観光の魅力があるはずだと、いま、あらゆる自治体が自らの街の魅力探して、アピールしています。
東京は海外からの観光客にアピールし始めています。昔は東京といえども首都機能と居住環境が混在した都市でした。しかし、いまは「お・も・て・な・し」の精神があふれ、どこも自らの魅力を意識して、発信力を高めている印象です。庶民の生活の苦しさとは裏腹に、街自体がショーケースのようにきらめいている感じがします。
国策の実験場である東京は別として、東京の郊外でしかなかった関東各県、とくに北関東諸県もインバウンドを呼び込むことに注力しています。名だたる観光地でも、たとえば価値ある古い建物がポツンとあるだけだと、期待外れ、などと言われる時代です。何万キロの旅程の果てに来日した観光客に、そんな期待外れを味わわせるわけにはいかない、という気持ちもあるでしょう。
魅了して、自分で体験をしてもらう
観光地は「みてもらう」から「魅了して、そして自分で体験をしてもらう」という、観光客側の立場になった工夫やアピールをしていることがうかがえます。
そうなると、観光の魅力度の価値は観光客の評価も重要なので、発信側がこれだけやりました!ということも大切なのですが、受け手の声を聞くことも大切になりますね。観光にも、人と人、1対1のコミュニケーションがより重視される時代の到来ですね。ごきげんよう。
草々
(散歩好きの文明批評家)