【橋立多美】「美術の世界には、こうしなければという決まりはない」を合言葉に、将来への不安や介護の悩みなど、同じ思いを分かち合う仲間と絵を描く過程を大切にする筑波山麓の絵画教室が30日から、古民家を改装したカフェ&ギャラリークラウドナイン(つくば市大角豆)で「小さな夜の絵画教室展」を開く。水彩とアクリル画約20点を展示する。
教室を主宰するのは筑波山麓に住むフリーのイラストレーター小沢陽子さん。気取りがなくて明るい小沢さんのアトリエには、地域の知人や生まれ育った下妻の友人たちが集まり、井戸端会議が始まるのが常だった。こうした仲間たちで4年前に絵画教室がスタートした。
メンバーは60~70代の7人。店を切り盛りする人や養鶏に携わる人など、全員が仕事を終えて顔をそろえるのが夜7時。それから絵筆を握る。
小沢さんは千葉大学教育学部卒。教壇には立たなかったが、ルールにとらわれず自由に表現する現代美術を追求しており、教室では描き上げるまでの過程を楽しむことにしている。時に絵画教室が井戸端会議の場になることがある。仕事や介護に傷付き、辛くて参加したメンバーがいると「制作よりも大事」と皆で話を聴く。思いを分かち合い、打ち明けた本人は心が晴れてスッキリした顔で帰っていくという。
もっと年をとっても教室を続けようというメンバーたちは、教室が仲間たちの安否確認の機能を果たすと考えている。移動手段の車をいつまで運転できるかがネックだが、小沢さんは「多様な人々が共に生きる地域社会のモデルを仲間と模索していきたい」と話す。
年を重ねると新しいことに挑戦する機会は少なくなる。作品発表に戸惑う声もあったが、思い出づくりとして制作に打ち込んできた。会期は30日(金)~4月11日(水)、5日は休廊。入場無料。
