【コラム・古家晴美】つくば市のTX研究学園駅から車で10分弱の場所で、次世代型家庭菜園「ハルファーム」が開設を待っている。「ハル」は、How to/方法、 Agriculture/農業、 Rich time/豊かな時間、 Utopia/理想郷の頭文字。新しい菜園は「土と心を耕す自然共生型貸し農園」と銘打たれている。

1区画10平方メートルの畑を250区画開設する予定だ。農機具を貸し出すので、手ぶらで来園できる。農作業後も、ロッカールーム・シャワールーム・トイレを完備したクラブハウスでくつろいでほしいという。育苗用のビニールハウス、収穫した食材でのバーベキュー施設や、ピザ用の石窯も併設される予定だ。まさに、かゆいところに手が届く施設が整えられつつある。

施設自体は、まだ建設許可申請中だが、先行してすでに様々なイベントが開催され、これからも続く。コンサートやキッチンカーを動員した農園のキャンペーン、種まき講習会、収穫や料理講習会(予定)などだ。

この農園の仕掛人、中野一秀さん(74)は、3年前にこの事業に取り組みたいと思い、準備を始めた。実家はこの土地に代々住む農家で、コメ、野菜、養蚕に取り組んできた。子どものころに手伝った記憶はあるが、ご自身は長年、フリーのプログラマーを本業とし、農業にはそれほど深く関わってはこなかった。

しかし、現代における農業見直しの流れが、中野さん自身を大きく突き動かした。自然との触れ合いが少ない都市民に照準を絞り、野菜作りを通して自然との関わり、また人との関わりを回復するために、自分が何かできることはないかと考えるに至る。

畑を管理するアプリも開発

その後の氏の行動力には目を見張る。初めに既存の民間の市民農園に複数個所参加し、そこで改善すべき点を洗い出し作業に手を付ける。その後、様々な団体から補助金や援助金を引き出し、それを資金源としてイベントや活動を展開している。具体的な活動には、企画や広報のプロの手も借りた。

また、本業を生かして、畑を管理するアプリを開発。農作業記録を入力し、次回、どのような作業をいつ行えばよいかわかるように助言してくれるものだ。農園からのお知らせなども共有できる。

このようなタイプの市民農園の需要は、これからますます増大していくのではないかと言う。自分で作った安全で新鮮な野菜を求め、かつ利便性を追求した農業だ。残念ながら、読者の関心が最も高いであろう利用料金については、まだ公示されていない。

食と農の距離をどのように取り、それを暮らしの中でどのように位置づけるか(作業時間、コストパフォーマンス)など、様々な課題はあるが、新たなライフスタイルとして注目される。(筑波学院大学教授)