土曜日, 6月 27, 2026
ホームつくば「今」と向き合う若手作家14人 県つくば美術館で写真展

「今」と向き合う若手作家14人 県つくば美術館で写真展

国内外で活躍する14人の若手作家による写真を中心とした作品展「ヴィジュアル・コミュニケーション展2023ーレジリエンス:不確実性のうちを生きる」が、12日から県つくば美術館(つくば市吾妻)で始まった。主催は市内在住の写真家、田嵜裕季子さんが代表を務めるビジュアルコミュニケーション研究会。田嵜さんが教べんをとる日大芸術学部で写真を学んだ卒業生らが参加する。同会による展覧会は2011年4月に始まり、今回で7回目を迎える。

これまで展覧会では、その時代の世相を映像で表現することに努めてきた。今回のテーマを「不確実性」にした理由を田嵜さんは「私たちの元には、AI、コロナ、戦争など次々に起きる問題が、多くの情報と共に毎日押し寄せ、まるで霧の中を手探りで歩いているような時代を生きている。今が『不確実』であるとあえて言うことで、この時代を誰もがたくましく生き抜くことができればという思いを込めた」と説明する。

会場には、戦争の記憶を写真で表現する菊田真奈さんの「安らかに眠ってください 過ちは繰返しませぬから」▽横になれないよう真ん中に肘掛けを付けたベンチなど公共空間の「排除アート」をテーマにした阿部隼也さんの「The Appearance of Spaces(ゼ・アピアランス・オブ・スぺイシス)」▽施設に入所した祖母と向き合う飯田茜さんの「Unsicherheit(ウンジヒャーハイト)」など全14作品が展示されている。

相対化、問いかけ

出展者の一人で写真家の三橋宏章さん(38)は、これまで東海村の原子力関連施設や東京都千代田区にある千鳥ケ淵戦没者墓苑など、社会的な問題を抱える風景を写真にし、発表してきた。今回展示するのは数年前から取り組む国立公園をテーマにした「風景、まなざし、国立公園」。釧路湿原や富士山、瀬戸内海、屋久島の森など6カ所の写真を展示している。

千鳥ケ淵戦没者墓苑に関心を持つ中で、同墓苑の植生を設計した造園学者、田村剛氏が、日本の国立公園の「産みの親」であると知ったのが、このシリーズに取り組むきっかけになった。その目的を三橋さんは「国立公園は『日本を代表する自然の風景地』として法律で政治的に定められた『日本』を表すもの。それを写真にすることで日本という国を相対化して見ることができるのではないかと考えた」と話す。写真中央に、三橋さんのカメラに背を向け壮大な風景に見入る観光客が映り込むのが特徴だ。「不確実性の高い現代で、人間や社会を超えた存在を求めているようにも見える。そう駆り立てるものを写真で表現したかった」と作品への思いを語る。

地方都市の文化とコミュニティーをテーマに作品を作る浦邉俊考さん(23)は、故郷の房総半島と、そこと歴史的なつながりを持つ紀伊半島を舞台とした写真6点を展示する。民俗学者・柳田國男が説いた「黒潮」の流れに乗って移動した人の営みに、二つの半島のつながりを見出すとともに「地域らしさ、幸せとはなにか」を問いかける作品だ。

社会に向き合うきっかけに

SNSやニュースに動画が増えるなど表現手段が多様化している中、主催団体代表の田嵜さんは「私たちは、わかりやすく短時間で説明された情報を見せられ、無意識に消費しているが、写真は、そこに立ち止まって自分で読み解くという側面がある。若い作家たちが向き合っている『今』に出会うことで、より主体的に社会に向き合うきっかけにしてもらいたい」と来場を呼びかける。(柴田大輔)

◆「ヴィジュアル・コミュニケーション展2023ーレジリエンス:不確実性のうちを生きる」は県つくば美術館で開催。会期は18日まで。開館時間は午前9時半から午後5時、最終日のみ午後3時まで。入場無料。18日は、国内外で開催されるフォトフェスティバルの企画等に関わるキュレーターの菊田樹子さんと参加作家によるトークイベントが11時から開催される。問い合わせはメールで。

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公立学校も「経営」の視点を持つ時代へ《よぎさんの眼》2

【コラム・よぎ(P.ヨゲンドラ)】日本の公立学校は今、大きな転換点を迎えている。少子化による生徒数減少、教員不足、教育ニーズの多様化、さらには地域間格差の拡大により、従来型の学校運営では立ち行かなくなりつつある。これからの学校には、単なる「運営」ではなく、学校運営や教育活動に関する情報を数値化したデータとしてフォローする「経営」の視点が必要である。 これまで公立学校では、「前年通り」が重視される傾向が強かった。予算、教育活動、組織体制など、多くが慣例ベースで維持されてきた。しかし、人口減少時代に入り、学校は自然に生徒が集まる存在ではなくなった。特に地方では、学校の魅力そのものが地域の存続に直結する時代になっている。 社会ニーズに応える学びの企業 私は、公立学校も「学びの企業」として再定義する必要があると考えている。もちろん、利益追求を意味するものではない。ここでいう経営とは、「生徒ファースト」を掲げ、「限られた人材・予算・時間を最大限活用し、生徒の成長という成果を高めること」である。あらゆる教育活動を連携し、その効果を最大化するデザイン・シンキングが必要である。 例えば、民間企業では、顧客ニーズを分析し、組織改善を繰り返しながら価値向上を図る。一方、多くの学校では、生徒や保護者が何を求めているのかを十分分析できていない場合も少なくない。大学進学だけでなく、国際教育、探究活動、デジタル教育、キャリア教育など、社会が求める力は大きく変化している。それにもかかわらず、教育内容や学校組織が変化できなければ、生徒の学びと社会との間にズレが生じてしまう。 人材育成こそが教育現場改革の鍵 また、学校経営において重要なのは「教員育成」である。優れた校舎や設備があっても、教員組織が疲弊していては教育の質は向上しない。現在の学校現場では、長時間労働や過剰な事務作業により、教員が本来注力すべき「生徒と向き合う時間」が奪われている。 多くの教育委員会は立派な研修センターを持っていても、教員や管理職育成のための実践的な講座をデザインしていない。教員が必要とする授業のアイディアや道具を研修センターでトコトン研究すべきである。教員の内外研修、業務改善やDX化を進め、教員が創造的な教育活動に力を注げる環境づくりが必要である。 さらに、校長の役割も変わるべきである。従来の管理型ではなく、学校の方向性を示し、人材を育て、外部と連携しながら組織を動かす「経営者型リーダー」が求められる。企業、大学、自治体、海外機関などとの連携を進め、学校を地域と世界につなぐ存在にしていく必要がある。学校の予算は事務長任せではなく、新規調達、維持管理費の妥当性を自ら確認し、業者を増やすことで癒着を解消していくべきである。 「選ばれる学校」への変革 これからの学校は、「ただ存在する学校」ではなく、「選ばれる学校」へと変わっていく。そのために入学希望者のニーズを理解する必要がある。教育改革とは、単なる制度変更ではない。学校という組織そのものの在り方を問い直すことなのである。人口減少社会の日本において、学校経営の改革は避けて通れない課題であり、日本再生の重要な鍵の一つになるだろう。(元県立土浦一高・付属中学校長)

武蔵美卒業生28人 個性あふれる作品117点展示 つくば美術館

武蔵野美術大学(東京都小平市)を卒業した県内在住者及び県出身者で構成する同大校友会第23回茨城支部展が23日から、つくば市吾妻、県つくば美術館で開かれ、油彩、日本画、水彩、工芸、和製本など28人による117点の個性あふれる作品が展示されている。28日まで。 県在住者及び出身者は約1000人が該当するが、同県支部は約30人が会員となっている。支部展は毎年開催され今年で23回目。 支部長の冨澤和男さんは(67)は10点を展示。会期中、日本の伝統的な製本様式である和装本のワークショップが開かれることから、今回初めて和装本を出展した。ほかに、明治時代から続く土浦の老舗「保立(ほたて)食堂」を、色鉛筆デザインと油絵とで書き分けた作品を展示した。「現在の保立食堂は看板が壊れており、15年前に撮った写真のものと現在のものを再構成した。今回は色鉛筆と油絵という二つの手法で描いてみた。見る人によって好みが分かれており興味深い」と語る。 数年ぶりに出展した清野光男さんは、福島の原発事故などメッセージ色の強い作品を描いてきた。今回はウクライナ戦争をテーマにした「分断と破壊」と題した作品を基本に、さらに複数の素材や技法を組み合わせて制作するミクストメディアの手法を使って描き、「境界と分断」「地景と分断」「地景 地と空」など計4点を展示した。 NEWSつくばコラムニストでイラストレーターの川浪せつ子さんも出展。NEWSつくばで連載してきた「ご飯は世界を救う(おいしい時間)」で描いた水彩画のほか、「つくば良いトコ」「古民家の夜景」(いずれも水彩画)などを展示している。川浪さんは「スケッチはその場でほぼ完成するものもあれば、後からきちんと描くものもある。つくばのまだ知られていない楽しいところや癒されるところをさらに絵にして紹介していきたい」と語る。 ほかに中村茂子さんの皮革工芸作品「時空花」などの展示もある。 冨澤支部長は「昨年よりも作品数は多くなったが。会員は増えていない。若い人が入ってくればもっとバリエーションに富んだ面白いものになる。まだまだ卒業生はたくさんいるので、仲間になってもらいたい」と話す。(榎田智司) ◆武蔵野美術大学校友会第23回茨城支部展は、6月23日(火)~28日(日)、つくば市吾妻2-8、県つくば美術館で開催。開館時間は午前9時30分~午後5時(最終日は午後3時まで)。入場無料。会期中▽ワークショップ「折本を作ろう!」を27日(土)午後1時30分~3時30分に開催。定員15人、参加費500円▽作家が自身の作品を解説する「ギャラリートーク」を28日(日)午後1時~2時30分に開催。定員無し・参加費無料。問い合わせは電話090-2669-9206(坂本さん)へ。