筑波山麓グリーンツーリズム推進協議会(つくば市北条)と野村不動産(東京都新宿区)が主催する里山交流イベント「かやぶきの里プロジェクト」が9日、つくば市神郡で開催され、同社が分譲する首都圏のマンション住民が筑波山麓で稲刈りを体験した。
過疎化と高齢化が進む農村と、故郷を持たない都会の子供たちをつなぎ、都市と農村の持続可能な関係を築くことが狙い。2012年から始まり、コロナ禍により3年ぶりの開催となった。
前日の台風13号による大雨で開催が心配されたが、東京、神奈川、千葉、埼玉から家族連れ46人が参加した。同社がマンション住民を対象にはがきで参加者を募った。費用は同社が負担し、マンション住民は無料で体験できる。参加者には後日、2キロの精米が届けられる。5月には50人が参加してすでに田植えを体験している。地元からは、同協議会やNPOつくば環境フォーラムのメンバーら13人が対応にあたった。
会場の「すそみの田んぼ(野村不動産エコ田んぼ)」は、同環境フォーラムが、生き物と共存するコメ作りをしている。当日つくば駅に集合しバスで現地へ。到着後、近くの林に移動し、まず収穫したコメを天日乾燥させる「おだがけ」で使うクヌギの木を伐採し、参加者が枝や葉を取り払った。さらに加工した木材を田んぼまで運び、稲が干せるように組み立てる。準備が出来たら、田んぼで稲刈りを体験。30分ほど作業をし、自然の中で家族ごとに食事をした。午後は、田んぼの生き物探しや虫取り、沢遊び、里山散策などを行った。虫取りは子供たちには稲刈りよりも人気があった。同協議会は、地元の農産物や菓子、ジュース、コーヒーなどを販売し、参加者と交流を図った。

東京都港区から参加した柳川剛教さん(37)は「子供たちに自然環境を体験させたいと申し込んだ。ここは素晴らしい環境に恵まれており、子供たちは稲刈りや昆虫観察を楽しんだ。かつて筑波大学に通っていたのでつくばは懐かしい地。今でも愛着がある。今後このような企画があれば是非また参加したい」と述べた。
同社によると、体験イベントは分譲マンションの住民を招待するという顧客サービスであると共に、企業の社会貢献でもあるという。一方、同協議会は、都会の人に農村の魅力を知ってもらい、将来、定住や就農につながればと期待を持っている。農村に憧れる都市住民は一定数おり、うまくマッチングできればビジネスチャンスになり得ると関係者は話し合った。
同協議会事務局の安藤彗さん(40)は「当初は100人集めようと計画したが、コロナ明けということもって慎重に進めたいという双方の意見で50人ということになった。グリーンツーリズムが目指すものは都市と農村の交流の促進であり、最終的には都会の人が農村部の価値観に気づき、担い手不足に陥っている農業などに目を向けてくれればありがたい」と語る。