【橋立多美】インド洋に浮かぶ島、スリランカ生まれのリヤナアラッチゲ ハシタ ガラシャーン サマラヴィクラマさん(26)は、筑波学院大学(つくば市吾妻)に在籍する留学生。名前が長いのはスリランカでは常識で自称「ハシータ」。ほりの深い顔だちで笑顔が優しい。来春卒業後は、日本製の車や母国の紅茶などを交易する会社を設立したいと学業に励んでいる。
同大学は、学外活動を通して社会に貢献する意欲を育むOCP(オフ・キャンパス・プログラム)を実践している。2年生のハシータさんは霞ケ浦の玄関口にあるヨットハーバー、ラクスマリーナ(土浦市川口)で、年4回開催されている「誰でも楽しもう霞ケ浦」の運営に関わった。年齢や経験、障害の有無を問わず水上体験ができる催しで、セイラビリティー土浦(代表・秋元昭臣ラクスマリーナ専務)が主催している。
カヌーやヨット、ゴムボートなどのマリンスポーツの操船を覚えてから会場の設営、乗船の介添えなどを行った。乗船客とはゼスチャーを交えて交流し、出会った人からの「ありがとう」は今も忘れられないという。
OCP活動は、3年生になると地域への貢献を意識した企画立案と実現に取り組む。翌年ハシータさんは霞ケ浦のマリンスポーツに外国人参加者を増やすため、「誰でも楽しもう霞ケ浦」の一環として「外国人を対象としたバリアフリーヨット活動」を企画。年4回(5月の子どもの日、7月の海の日、8月の土浦キララ祭り、10月の体育の日)のイベントに毎回外国人20人の参加を目標にした。
いつもイベントの1週間前にSNSで友人ら1600人に参加を呼びかけた。このうち土浦近辺に住んでいる外国人は約80人で閲覧者160人が「いいね!」ボタンを押してくれた。しかし8月のイベントまで参加者はいなかった。最後の10月は目標に到達したいと、アルバイト先のコンビニにポスターを貼ったり声掛けをして手応えがあったが、悪天候でこの日も外国人参加者はゼロ。「ショックだった」と振り返る。
ハシータさんは外国人ゼロの理由を考えてみた。忙しい、興味がないといった返答もあったが、多かったのが「安全じゃない」と「アクセスが悪い」だった。
ラクスマリーナでは、乗船者はライフジャケットの着用と保険加入が必須で、複数のスタッフが常時監視している。「安全面の情報をきちんと伝えるべきだった。広報の難しさを実感しました」と話す。「アクセスが悪い」については「歩いて案内できる良い場所」と捉える。JR土浦駅から徒歩15分の道すがら土浦のまちを案内できると柔軟な考えだ。
ハシータさんが意外に感じたのは日本の友人の「霞ケ浦の水は汚いから近づきたくない」だった。1970年代のひどい悪臭を伴うアオコ発生が、地元に霞ケ浦イコール汚いのイメージを根付かせた。現在は水質が改善している。ハシータさんは「霞ケ浦はマリンスポーツを身近に楽しめる好適地。(水質は)気にならない」と話した。
昨年の痛い経験にめげず、ハシータさんは5月5日の子どもの日に「外国人を対象としたバリアフリーヨット活動」を開催する。目標は30人。外国人の視点に立ち、地域のアミューズメント施設の広報に知恵を絞っている。
※来日後の暮らしをつづったハシータさんのエッセーが、17日付けで筑波学院大学の留学生エッセー9に掲載されています。