【コラム・片岡英明】5月の「つくば子どもと教育相談センター」総会で県立高校問題を5分ほど話した。すると参加者から中学受験の質問があり、それを契機に話し合いが盛り上がった。そこで今回は中学受験について考える。

中学受験の背景

つくば市は人口増の中、県立高校が削減され、そこにTX沿線開発で小中学生が激増。さらに2020年から県立付属中設置で高校入学枠の削減が追い打ちをかけた。つくば市の小中学生は自分の進路の選択肢が狭くなり、そのために中学受験に目が向いているのか。

中学受験に対する首都圏からの転入増の影響はどうか。東京の全日制高校は186校の都立より245校の私立の方が多く、その割合は4対6。私学の流れが強い。さらに187校ある私立中の133校(71%)が中高一貫。東京の中学受験の文化がつくば市にも流入しているのか。

しかし、生徒や保護者が知りたい中学受験に関して冷静な情報は少なく、素朴な疑問が解消されないまま、塾ベースの宣伝や口コミに流される傾向がある。そのため保護者にも不安がある。

そこで、「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」は6月の学習会で、つくばの県立高校不足の周辺の問題としてデータに基づいて中学受験についても考えることにした。

中学進学者の推計

まず、最初のデータでつくば市の中学進学数を捉える。つくば市ホームページのopen data(オープンデータ)で前年の小6と次年度の市立中1年の生徒数の差を調べる。これを県立中学、県内私立中、県外私立中などへの中学進学者数とする。もちろん小学卒業時の転出や中学1年の転入もあるので概数である。

<6年間の中学進学者の推移>

▽2018年:中1=1940人、前年小6=2193人。差は253人(11.5%)

▽2019年:差は285人(12.3%)

▽2020年:差は249人(10.4%)

▽2021年:土浦一高が付属中募集開始。差は304人(12.3%)

▽2022年:水海道一高・下妻一高も付属中募集開始。差は331人(12.8%)

▽2023年:中1=2155人、前年小6=2506人。差は351人(14.0%)

<上の数字から言えること>

▽つくば市では中学進学者が人数・割合ともに増加傾向

▽23年は18年より中学進学者が約100人増

▽22年の小6は17年より313人多く、中学進学増は小学生増に伴う面も

▽正確に把握するには転出などを含む資料や中学別の分析が必要

中学受験 学びの視点

中学受験は、つくばの生徒増・県立高不足・県立中設置・東京などの影響以外にも、生徒・保護者の希望、通学条件や費用負担、私立中や塾の指導など多くの要素が絡んでおり、単純な評価・批判はなじまない。

今は中学受験の論評よりも現状把握が先決である。子どもの気持ちを大事にしながら、まず情報を集め、丁寧に語り合うことから始めてほしい。

小中学生の学びの要点は何か? それはどこで学びのスイッチが入るかにある。生徒に学びのスイッチが入れば、高校や過去の成績に関係なく大きく伸びていく姿を見てきた。ゆえに中学受験を生徒にとっての学びの視点で考えてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)