【コラム・先﨑千尋】「ほしいも学校」という不思議な学校がある。建物がなければ、先生や生徒がいるんだか、いないんだか、外からは分からない。しかし、校歌があり、応援歌まである。一般社団法人として法務局に登記されてもいる。学校は15年前にできた。

その「ほしいも学校」が今月18日、ひたちなか市阿字ケ浦で「第2回世界ほしいも大会」を開いた。氷雨が降る寒い中、会場の阿字ケ浦ふれあい交流館には、北海道から鹿児島県種子島までの県内外の来場者約400人が訪れ、著名人の対談や国内外の干し芋、スイーツなどで干し芋の魅力を満喫していた。開会式では、地元の子どもたちが校歌を歌った。

ほしいも学校は、15年前にグラフィックデザイナーの佐藤卓さんがプロジェクトリーダーとなり、ひたちなか市や周辺の干し芋生産者、研究者、愛好家、商工会議所のメンバーらを集め、2年かけて『ほしいも学校』という本と「ほしいも学校」というネーミングの干し芋を作りあげた。

佐藤さんは超売れっ子のデザイナーで、「ロッテキシリトールガム」や「明治のおいしい牛乳」のパッケージデザインなどで知られている。

第1回の大会は7年前、やはりひたちなか市で開かれた。当初は4年に一度開く予定だったが、コロナウイルスの影響で延期されていた。

天日干しでしか味わえないうまさも

この日の大会は、人気の高いサツマイモの「『べにはるか』の誕生秘話」という講演、料理研究家の土井義晴さんと佐藤卓さんの対談「ほしいもに見る食の未来」、産地報告会、ほしいも販売、ほしいも料理の食堂など干し芋づくし。

干し芋の主要品種である「べにはるか」の開発に携わった、九州沖縄農業研究センター研究推進部の甲斐由美さんは「品種登録までに11年かかった。当初は干し芋用としては期待していなかった。色がきれいで甘みが強く、やわらかいのが消費者の好みにあったようだ。焼き芋などの食用にも向いている。大分の『甘太くん』、新潟の『いもジェンヌ』、静岡の『うなぎいも』などオリジナルブランドも出ている」などと話した。

土井さんは佐藤さんとの対談で、「昔からある玉豊という品種の干し芋がおいしかった。ほしいもの生産は、長いこと風と太陽を活かし、天日で干してきた。その景色は冬の風物詩だった。最近では経済優先、効率化の流れで機械乾燥が主流になってしまった。伝統的な天日干しでしか味わえないうまさもある。両方を活かす二刀流はどうか。玉豊も残してほしい」と、最近の傾向にくぎを刺す考えを述べた。

産地報告会では、国内では栃木県と三重県、海外では韓国、中国、東アフリカのタンザニアの生産者らから、それぞれの取り組みの現状と課題について報告があった(中国とタンザニアはオンライン参加)。

干し芋販売コーナーでは、本県産の他、鹿児島の安納芋の干し芋、タンザニア産の玉豊などが並び、干し芋を使った菓子類も販売されていた。来場者は作り方や味の違いなどを聞きながら、商品を選んでいた。寒かったけれども、心温まる大会だった。(元瓜連町長)