筑波大学の同期2人が書の作品を展示する「積羽展(せきうてん)」が21日、つくば市二の宮のスタジオ‘S(関彰商事つくば本社1階)で始まった。会期は3月5日まで。さまざまな種類の表現に触れておもしろさを感じてほしいと、漢字や仮名の作品17点を軸装や額装、折帖(おりちょう)で展示している。
筑波大同期が連絡取り合い合作も
作品を出展した佐藤汰一さんと小林佑太郎さんは筑波大の書コースで共に学んだ同期で、佐藤さんは現在、大学院博士前期2年生。卒業後は地元広島に戻り芸術の教員になるという。小林さんは大学卒業後、出身地の栃木で就職し、働きながら作品を書いている。佐藤さんと小林さんは書コースに男子学生が少なかったことから意気投合。一緒に展覧会を開きたいと企画し、実現した。
佐藤さんは「子規の句」や「戦国策」の一節など8点を肉厚な線で表現。小林さんは「万葉集」の東歌(あずまうた)や音楽ユニットYOASOBIの曲「群青」の歌詞など8点を繊細なタッチでつづった。展覧会のタイトルとなった「積羽」の2文字を書いた作品1点は2人で雰囲気を合わせ、合作した。同展は2月11日から19日にも栃木県足利市のカフェ「プラザハマダ」で開催され、個性の異なる作品を鑑賞した来場者からは「2人の人柄が見える」と反響があったという。
佐藤さんは主に大学で、小林さんは自宅で作品を書き、写真を送って意見を聞き合いながら仕上げた。字の形や構成のまとめ方などを話し合い、印を押す位置を決めるのに3時間かかったこともあったという。表装にもこだわった。佐藤さんは「どういう書が好きか、お互いはっきりと好みが分かれている。それぞれの作品の良い所悪い所を話し合いながらも、互いの表現したいところは尊重しつつ改善して作り上げた。小林のような表現は自分にはできず、刺激を受けている」と話す。
展覧会のタイトルの「積羽」は、「戦国策」出典の故事成語。軽い羽根であっても積もれば舟を沈める、転じて小さなことでも集まれば大きな力につながるという「積羽沈舟(せきうちんしゅう)」に由来する。作品作りを積み重ねていくことで書の力をつけ、書を楽しんでいきたいという2人の思いをこめた。
佐藤さんは「パソコンで出てくる明朝体やゴシック体のフォントをきれいな字として捉える風潮があるが、手書きに表れる書き手の持ち味に魅力がある。厳正な字だけではなくいろんな書き方があることを感じてほしい」と話した。(田中めぐみ)
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