市民団体「茨城に障害のある人の権利条例をつくる会」(=いばけんつ、事務局・水戸市)が18日、筑波大学春日エリア(つくば市春日)で映画『道草』(宍戸大裕監督作品、2018年)の上映会を開催する。重度知的障害者が介助者の支援を受けて、地域のアパートで一人暮らしをする様子を映したドキュメンタリー映画だ。同会共同代表の一人、生井祐介さん(45)は「知的障害者が生活する場は、入所施設やグループホームだけでなく、支援を受けながらの一人暮らしという選択肢もあることを、多くの人に知ってほしい」と話す。
知的障害者の一人暮らし
「重度訪問介護」は、重度障害者が長時間、人によっては24時間の介助を自宅で受けられる福祉サービス。従来、対象は重度の肢体不自由者に限定されていたが、2013年の障害者総合支援法施行で、重度の知的障害者や精神障害者にも広がった。映画には、重度訪問介護を利用し、一人暮らしをする重度知的障害者が登場する。
内閣府の2022年度版障害者白書によると、身体障害者における施設入所者は1.7%なのに対し、知的障害者においては12.1%と、施設入所の割合が高くなっている。昨年9月、日本政府は国連から「障害者の施設収容が継続され、地域で生活する権利が奪われている」と懸念され、「施設収容をなくすために、障害者の入所施設から、地域社会で自立して生活するための支援に予算を振り分けること」が勧告された。
全国各地の障害者団体などが国連の勧告を周知するために講演会を開催し、生井さんも何度か参加した。しかし、「一般参加者には内容が難しいのでは」と感じ、「幅広い人に、もっとわかりやすく伝える方法はないか」と考え、今回の上映会を企画した。「知的障害者も公的な介助サービスを利用し、一人暮らしができることはほとんど知られていない。その様子を映像として実際に見てもらうのが一番わかりやすいだろう」
反応に寄り添って本人らしい生活に
いばけんつ共同代表で、障害者団体、自立生活センターいろは(水戸市赤塚)事務局長の八木郷太さん(26)は、4年前から重度訪問介護を利用し、一人暮らしをする知的障害者を支援している。「当初は、何に対しても反応が薄く、表情からも、本人がどうしたいのか読み取れなかった。しかし、介助者との一対一の関わりで、ひとつひとつの反応に寄り添い続けた結果、今は好き嫌いなども表現してくれるようになり、本人らしい生活ができている」
生井さんは「重度知的障害者が地域で生活するためには、地域住民の理解も大切。今回の上映会を通して、当事者やその家族はもちろん、障害と直接関わりのない人にも、一人暮らしという選択肢が知的障害者にもあることを知ってもらう機会になれば」と話す。
上映後は、映画に登場する重度知的障害者の父親で、早稲田大学の岡部耕典教授(67)が知的障害者の地域生活の現状について講演する。23日には、上映会の参加者を対象に、映画の感想共有会が開催される。(川端舞)
◆映画『道草』上映会&ミニ講演会 18日(土)午後1時~3時30分、筑波大学春日エリア情報メディアユニオン1階講義室。参加費無料。上映会には字幕、講演会には手話通訳がつく。申し込みは13日までにこちらから。
◆映画『道草』感想シェア会 23日(木・祝)午前10時~11時30分、オンライン開催。参加費無料。申し込みは22日までにこちらから。